海外工場における改善活動

 少し古い調査になりますが、筆者が2009年に財団法人日本生産性本部と共同で実施した「生産革新・改善活動に関するトップアンケート調査」によると、国内工場と海外工場の両方を保有する企業122社においては、国内工場と海外工場で改善活動の進め方や抱えている課題が異なることが明らかになりました。もちろん、海外工場と一口に言っても、進出した国によってそれぞれ雇用環境や文化が異なりますので、改善活動の進め方や課題をひとまとめにして議論することは本来できません。そのため、ここでは、あくまでも国内工場と比較した場合の一般的傾向としてご理解頂ければと思います。

 まず、改善活動の進め方については、国内工場では、現場の自主性を重んじたボトムアップ型の改善アプローチを採用している企業が約4割と比較的多いのに対して、海外工場では、対照的にトップダウンで改善活動を実施している企業が約8割と圧倒的に多い状況が浮き彫りになりました。

 次に、改善活動を進める上での課題について見てみると、国内工場では、自主性を重んじたボトムアップ型の改善アプローチを採用し、効果を速やかに刈り取る改善のスピードが要求されているものの、実態としては、必ずしも要求されたスピードで改善が成功裡に実行されている訳ではなく、活動が思うように進捗しなかったり、経営トップから見ると改善の徹底度が不十分であったり、また改善活動に対する現場の疲弊感もあって活動が継続しないなどの実態が浮き彫りになりました。

 一方、海外工場では、トップダウンで改善活動を試行しつつも、実態としては、必ずしもトップの意向が現場まで浸透しておらず、トップダウンが機能していないゆえに、「問題があっても気にならない」「問題を問題として認識していない」「わかっていても実行しない」など、問題の認識面、活動の実行面で大きな課題を抱えていることが明らかになりました。

 このように、国内工場と海外工場では、改善活動の進め方や抱えている課題が異なる傾向にあることを考慮に入れると、3Sを中心とした発見型改善も、国内工場と海外工場ではその位置づけが異なると考えられます。つまり、誤解を恐れずに端的に要約すれば、国内工場では、改善のスピードが過度に要求され過ぎ、現場が疲弊することで、活動の継続面・徹底面で課題を抱えている現状に対して、本連載講座では、逆に無理せず活動を楽しみながら長期間継続することで、徐々に活動を定着させ徹底していくという方向性で発見型改善を提案してきました。

 しかし、海外工場では、トップダウンで改善活動を試行しつつも、トップダウンが機能せず、問題の認識面、活動の実行面で大きな課題を抱えているため、国内工場と同じように、無理せず活動を楽しみながら現場の自主性を重視して活動を継続することを強調しても、あまり有効ではないと思われます。むしろ、海外工場では、特に活動が軌道に乗るまでは、職場の規律形成に重点を置いて、活動を日々実行することをある程度強制し、3Sを中心とした改善活動を慣習的行為として定着させていく必要がありそうです。