データに頼りすぎず、アイデアを大切にする

川名:ジムさんは、マーケティングコミュニケーションとマーケティングは似ているようで全然違うとおっしゃっていて、私もそう思います。マーケティングは非常に大きな概念ですよね。

 ブランドごとの権限を持つブランドマネジャーがいる中、CMOは組織全体を横串で統括して見るという役割になると思います。CMOは経営に影響力を持つ必要があると思います。そうでないとブランドのトップに意見することもできません。現在、日本には、こうしたマーケティング全体をマネジメントする立場の人はまだまだ少ないというのが現状ではないでしょうか。日本のマーケティング業界に対して、ジムさんから提言はありますか?

ステンゲル:昨年秋、日本マーケティング協会で私が講演した頃から、大分「CMO」という言葉が日本のマーケティング業界で課題として使われ始めていることは聞いております。以前よりよく議論し、優先順位をもって考えるということでは改良されてきていると思います。重要性の認知は上がっていますね。ただ、行動はまだ遅れているでしょう。私は、安倍首相も日本国家のCMOを設けてはと思います。もともと日本は非常に寛容で教育レベルが高く、美的センスとデザインのセンスのいい国ですから、日本にCMOを置くことで行動力が上がれば、爆発的な効果を生み出すと思います。

川名:今、「顧客を知る」ツールはたくさんありますが、ビッグデータではどうなのでしょうか。さっきおっしゃった「問いかけが大事」ということと同じく、データに頼りすぎず、問題意識を持って行動を起こさないと顧客は見えてこないということですか?

ステンゲル:そうです。データに頼らずにぽっと浮かぶ質問でも、素晴らしいものが出てきます。そこからデータを集めるわけですよね。リーダーの仕事というのは期待値をきちんと設定すること、正しい基準値を設定すること、そして正しい問いかけをすることです。

川名:ぽっと正しいアイデアが浮かぶには、どういうことをすればいいのでしょうか?

ステンゲル:もちろん事業を理解していなければなりませんから、その裏付けとなるデータはある程度頭にはいっている必要があります。それから社内にばかりいないで、外に出て現場を見る時間を持つことが大切です。イノベーション、クリエイティビティ、そして顧客との接点を失わないということ、これらは社内にいるだけでは実現しません。問題のある市場を見にいったり、先進的な顧客の様子を見に行ったりなど、目標を設定して出かけましょう。そして、新アイデアでの収益をどの程度とするか、破壊的な革新性をもたらすやり方をどの程度行うかといったことを設定してもいいと思います。