涙の告白

 ナサニエルと私が、ある大規模な会議の進行役を務めた時のこと。そこには、企業や非営利組織、政府、軍関係の著名なリーダーたちが多数参加していた。私の隣に座っていたのは、数多くの部隊を直轄する軍の高官だった。彼は非常に独断的なところがあり、それを誇りにすら思っているようだった。たとえば、会議の参加者が人格について討論していた時、彼は次のように述べた。「私は人格者を尊敬しているし、私の軍のように、本当に価値のある組織を高く評価している。だが、この会議のような茶番劇は信用できない」

 そして、我々がナサニエルのエクササイズを始めると、この軍人は自分の改善すべき行動として「私が独断的なところを直せば・・・・・・」を選んだ。彼がどれほど率直になれるのか疑問を持った私は、その様子を観察することにした。私の予想通り、1巡目では彼は咳払いをしながら、改善の効果について実質的なことを述べず、皮肉交じりのコメントを漏らした。2巡目ではさらに冷笑的な態度を強めた。

 だがその後、何かが変わった。3つ目の効果を言う番になると、彼は皮肉を言うのをやめた。それから数巡後、彼は目に涙をためてこう言った。「私が独断的なところを直せば、子どもたちはまた私と口をきいてくれるだろう」

 その日以来、私は何千もの人々にこのエクササイズを実施してきた。多くの人は、最初に「会社のため」の効果を述べる。たとえば、「この改革は会社の利益に貢献するでしょう」というように。そして最後に、より人間的な効果について言及するようになる。「この改革は私をよりよい人間へと成長させるでしょう」という具合だ。

 特に印象に残っているのは、ある猛烈型の幹部のケースだ。彼は改善すべき行動として「私がもっと人に任せられるようになれば」を挙げた。1つ目の効果は、直属の部下がより大きな責任を進んで担うようになるということ。そして最後の効果は、60歳の誕生日を迎えるまで生きられる、であった。

自分で試してみよう

 さて、今度はあなたが改善したい行動パターンを1つ選ぶ番だ。「私がもっと上手に○○○できるようになれば・・・・・・」を、何度も繰り返し完成させるのだ。潜在的な効果を述べる自分の声に、じっくりと耳を傾けよう。その改革が自分にとって価値のあるものかどうかを、驚くほどすぐに判断できるだろう。


HBR.ORG原文:An Exercise in Changing Yourself January 11, 2010
 

マーシャル・ゴールドスミス(Marshall Goldsmith)
エグゼクティブ・コーチングの世界的第一人者
ジャック・ウェルチを始め多くの名だたる経営者を指導してきた。代表作に『コーチングの神様が教える「できる人」の法則』(日本経済新聞出版社)などがある。