どこまでがリアルな増収・増益か?

 しかし、この増収・増益にはリアルな部分と為替レートによって外貨を換算することによる計算上の部分とがある。まず、リアルな部分を考えよう。このリアルな部分というのは、要するに輸出の部分である。つまり、企業自身は日本国内にいて、日本国内で生産し、生産した製品を外国で販売するケースである。

            (図1)輸出のイメージ

 たとえば、原価150万円の自動車を輸出し、2万アメリカ・ドルで販売したとしよう。1ドル80円なら、売上げは2万ドル×80円/ドル=160万円で原価は150万円なので粗利(売上総利益)は10万円だが、1ドル100円なら、売上げは2万ドル×100円/ドル=200万円で原価は150万円なので粗利は50万円である。これは円安によるリアルな増収・増益といえる。

 また、円安によって円ベースで考えた場合の売上げや粗利が増えるのであれば、外貨建ての販売価格を引き下げることも考えられる。値下げによって、製品1つあたりの販売収入は減るものの、販売数量自体が増えるので、値下げによって売上げや利益が増える場合もある。このケースも、円安によって価格競争力がつくことによって、リアルな増収・増益となる。

 必ずしもリアルと言い切れないのは、現地生産・現地販売の場合である。会計的には在外子会社の外貨建て財務諸表の換算が問題になる。在外子会社の外貨建て財務諸表は、期末レートまたは期中平均レートで一括換算されて連結損益計算書に足し込まれる。

      (図2)在外子会社による現地生産・現地販売のイメージ

 たとえば、日本の親会社が150万円の原価の自動車を200万円で売り上げ、アメリカの子会社が1万5000ドルの原価の自動車を2万ドルで売り上げているとしよう。1ドル80円なら、連結売上高は200万円+2万ドル×80円/ドル=360万円。連結売上原価は150万円+1万5000ドル×80円/ドル=270万円なので、連結売上総利益は360万円−270万円=90万円となる。一方、1ドル100円なら、連結売上高は400万円で、連結売上原価は300万円なので、連結売上総利益は100万円となり、増収・増益である。

 しかし、この増収・増益は、ある意味で、見掛け上のものにすぎず、必ずしもリアルな増収・増益とはいいがたい。この在外子会社が今期限りで清算され、残った現地通貨を日本円に転換する場合や、毎期毎期、在外子会社の利益を全額配当で日本の親会社に吸収する場合といった極端なケースをのぞけば、在外子会社の利益は、その国の通貨で稼ぎだされ、その国の通貨のままで、その国の事業に再投資される部分も多いだろう。この場合、日本円に換算したときに出る売上げ増や換算利益は、リアルなものなのだろうか。少なくとも100パーセント、リアルな増収・増益であると断言するのにためらいを感じるのは筆者だけではないのではないか。