3.利益率の稀薄化が心配でやめてしまう
 企業が安定している時、新たなアイデアの良し悪しを判断する尺度として便利なのは粗利益率だ。利益率を高めるアイデアを、利益率を稀薄化させるアイデアより優先させるのは理にかなっている。しかし、変化の激しい環境においては、利益率を下げるアイデアを退ける企業は新たなビジネスモデルを開拓するチャンスを逃すことになる。それは、これまでとまったく異なる方法でより多くのフリーキャッシュフローをもたらす可能性があるにもかかわらず。

 営業利益率30%の新聞社が、利益率の低いオンラインのビジネスモデルを懐疑的な目で見たのは自然なことだった(NBCユニバーサルのジェフリー・ザッカーが、「アナログで稼ぐ大金とデジタルで稼ぐ小銭を交換するのは難しい」と語ったのは有名だ)。しかし、適切なビジネスモデルがあれば、利益率の低いモデルも大きな利益を生み出す可能性がある。

4.ブランドに邪魔される
 ブランドという、空気のようなものに荘厳な力が与えられているのにはいつも驚かされる。次の会議を少し楽しくしたいなら、「ブランド」が実際に何を意味するのか、出席者に定義してもらうとよい。また、中身の薄い計画を正当化したいなら、「ブランドのためです」と言おう。しっかりとしたアイデアをつぶしたければ、鼻を鳴らし「これは我が社のブランドを傷つけるかもしれない」と言えばよい。

 この言葉は、性能を犠牲にしてシンプルさや便利さを特徴にして売り出す、破壊的イノベーションにおいてよく言われる。また、企業がとても斬新なコンセプトを市場で試そうという時、ブランドが被るダメージを心配して、そのアイデアをつぶしてしまう場合にも使われる。

 初期のテストは戦略上重要な点にフォーカスすべきだ。たいていの企業は自社ブランドの力を把握している。テストなのだから、既存のブランドを使わずにやってみるべきではないだろうか。結局のところ、よいブランドはアイデアをさらに優れたものにするだけなのだから。

5.チャネルの罠に捕らわれる
 ひとつ確かなことがある。ある営業担当者が、既存の製品を高価格で売るという選択肢と、低価格の新製品の売り方を学ぶために投資するという選択肢を与えられたら、必ずや、既存の製品を選ぶということだ。人は合理的でないと思うことはやらない。しかし破壊的な成長を遂げたいと思う企業は、市場への新たなチャネルを検討するべきだ。さもなければ、苦労するのは目に見えている。

 大企業は偉大なことを成し遂げる潜在能力を持っている。にもかかわらず、イノベーター用の拘束衣を身に付け、不満と失望に身を委ねている。


HBR.ORG原文:The Innovator's Straitjacket December 20, 2012
 

スコット・アンソニー(Scott Anthony)
イノサイト マネージング・ディレクター
ダートマス大学の経営学博士・ハーバード・ビジネススクールの経営学修士。主な著書に『明日は誰のものか』(クリステンセンらとの共著)、『イノベーションの解 実践編』(共著)などがある。