真の差別化は、均整の取れた状態から生じるものではない。むしろ、偏りから生まれる。卓越性についても同じことが言える。脳外科医が、自分は小児整形外科やしわ取りの専門医でもあると言ったなら、あなたはうさんくさく思うだろう。なぜなら、どこかが抜きん出ていれば、どこかにその代償があることを、直感的に理解しているからだ。

 同じロジックを当てはめれば、ハマーをファミリー車として訴求するなら、同時にタフさやワイルドさを売り物にはできないはずだ。フェラーリが子供の交通安全キャンペーンを大々的に掲げるなら、スポーツカーの最高峰というイメージと相反する。卓越性には犠牲が伴うが、それは差別化の証でもある。

 とはいえ、うまく調和を取ろうとする衝動には抗いがたい。各社がそうした行動を積み重ねると、それは中庸へと向かう群れとなる。この文章を書いている今も、スターバックスはモーニングセットを、マクドナルドはコーヒーメニューを始めようとしている。

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 動物の群れに共謀はない。1つひとつの個体は勝手に動いているのに、全体として見れば、まとまった行動のように見える。コーディネーターのいない調和。科学者の言う自己組織化である。ミツバチの巣や蟻のコロニー、鳥や獣の群れ、交通の流れ、株式市場。この種の自然発生的な調和を、私は「有機的共謀」と表現したい。

 自己組織化を理解するのに最も簡単な方法は、1つの群れを分析することだ。1980年代、コンピュータ・グラフィックスを研究していたクレイグ・レイノルズは、鳥の群れ現象に興味を持った。スクリーン上で群れ行動を再現するプログラムを作るため、最初にルールを設定する。「近くの鳥と押し合ったり衝突したりしない」「近くの鳥から遅れない」「近くの鳥と同じような角度で進む」の3つである。

 他の条件はさておき、ひとまずこの3つのルールでシミュレーションを行ったところ、驚いたことに、鳥たちは完璧に一群となって飛んでいた。こうして、自己本位で近視眼的な行動ルールを守る個体が、群れ行動を生み出すことが確認された。

 面白いのは、群れに参加する者には、たった2つの要件しか求められない点である。

 第1は感知機能。周囲の参加者が何をしているかを察知する。ビジネスでは、ポジショニングマップがこれに当たる。自社の相対的な位置づけが明確になると、近くの競合に対して過剰なほど敏感になる。

 第2は反応性。周囲が方向転換したら、それに合わせて調整する。群れ行動に関して言えば、基本的な行動ルールは反応性となる。つまり、近くの鳥たちが左に向かい始めれば左へ、右へとスピードを上げれば必ずそれに倣う。

 ビジネスでもこの傾向が見られるどころか、すっかり根づいている。私たちの競争センサーは、他社とつかず離れずの関係を保たせようとする。アメリカン航空がマイレージサービスを導入し、コルゲートがホワイトニング歯磨きを発売して優位に立てば、他社も追随せずにはいられない。競い合う者同士が全体として1つの方向に向かっているように見えるが、群れの中の個々には、自分たちが同じ方向を目指している自覚はほとんどないだろう。