「食糧自給率改善システム」のデザインには、まず伝統的な農業や水産業という発想から「食糧供給システム」という発想への転換が必要だ。生産、一次加工、包装、物流、販売、二次加工、食事、廃棄の流れの中で発生しているシステム問題を把握し、改善するという発想である。食料自給率40%という議論があるが、何が中核課題なのかを明確にわかっている人は少ない。これはカロリー供給の自給率である。金額自給率は70%近い。

 高齢化と健康志向で低カロリー作物の国内生産が増えても、金額自給率には貢献するがカロリー自給率には貢献しない。しかも、日本人が摂取するカロリー消費率はそれよりかなり少ない。その差、全体の約30%程度は捨てられているのである。しかも、消費せず最後に破棄されるだけでなく、「食糧供給システム」の流れのすべてのステップで捨てられている。形が悪い、崩れた、大きさがそろわない、賞味期限が切れたなどで捨てられる。そういうことに本当こだわっているかどうかを消費者に聞いてくれたことはない。

 賞味期限と消費期限とは違う。賞味期限は英語表記では「Best before何月何日」と書いてある。その後は味が落ちるだけで食べていけないのではない。消費者も無知から無駄をしている。すなわち、「食糧供給システム」とは食糧の流れの上流、下流間の情報のやり取りによる相互啓発と最適化が重要なのである。それをデザインすることでシステムの効果が上がり、みんなの懸念する自給率は改善するのである。

「拡大首都圏(GTMA)活用システム」とは一都三県という首都圏ではなく、100キロ通勤圏を拡大首都圏(GTNMA;Greater Tokyo Metropolitan Area)として 新しく定義する。世界でも最大級の経済活動集積地である。経済規模でイギリス全体より大きい。しかも、都心に近い空港である羽田、金浦、虹橋の三角シャトルの拡充によってソウル、上海がこの拡大首都圏に融合すると、人口1億人近い、まさに巨大な経済圏に発展する。

 その中で先を走り、リーダー的地位を維持するための「社会システム」をデザインする。前回述べた「商業芸術集積システム」もその一部である。東京の吸引力を維持拡大するのである。それによって、上海が伸びれば東京が沈むのではなく、東京も一緒に伸びるという「相互連鎖」を作り出すようにデザインするのである。

 以上は過去十数年にわたって言い続けてきているが、なかなか実現していない。今後もいろいろな機会を見つけて言い続けるつもりだ。それに加えて、民主党政権とその時期に起こった原発事故の経験と反省を踏まえて、有能な政治家を育成・維持する「政治システム」と原発の一生を「想定外」を含めて適切に管理する「原発システム」のデザインをできるだけ早くやりたいと思っている。主義主張や党派とは関係なく必要だからだ。別に誰に頼まれたわけでもない。いつものとおりの勝手デザインである。

(了)

 

【連載バックナンバー】
第1回 「社会システム・デザイン」とは何か
第2回 社会システム・デザインは「身体知」であり「高度技能」である
第3回 悪循環は現象を見るのではなく「中核課題」を捉えよ
第4回 経験とボキャブラリーを駆使して良循環を創造する
第5回 良循環を駆動させるサブシステムを見つけ出す
第6回 問題だらけの医療システムを良循環に変えるには
第7回 冷え込んだ国内消費を拡大するには