システム・ダイナミックスをヒントに

 1960年代に「社会工学」という言葉が出来、東京大学には「都市工学科」という学科が出来た。「社会」や「都市」を一体どうやって「工学(エンジニアリング)」するのだろうかと不思議に思った。その後、ハーバード・デザイン・スクールのアーバン・デザイン学科に入学し、その魅力的な名前ほどには方法論も内容も確立していないことに失望した。その頃、MIT(マサチューセッツ工科大学)でジェイ・フォレスター教授が開発した社会現象のシミュレーション手法であるシステム・ダイナミックスの講義を聞き、「アーバン」はデザインできないが、「アーバン・システム」はデザインできそうだと感じた。

 先に述べた「住宅供給システム」というダイナミック・システムをデザインするアプローチを考えあぐねていたとき、システム・ダイナミックスが使っているアプローチを思い出し、それを活用できないかと考えた。システム・ダイナミックスではコンピュータ・モデルに大量の因果関係のループを組み込むが、モデルがブラック・ボックスになり、素人が結果を直観的に理解できない。「社会システム」は社会の価値観と絡んでいるので、素人もデザインに参加できるように数個のループに限ったほうがいいと考えた。

 システム・ダイナミックスは複雑な社会現象の因果関係を説明することで完結する。「社会システム・デザイン」はループの数が少ないため、社会現象の説明は不完全だが、そこで終わらず、新しい因果関係のループをデザインするステップで具体的な改善を組み込める。システム・ダイナミックスと同様、あらゆる社会現象を「社会システム・デザイン」で扱えるはずだという信念のもとにいろいろなテーマを試している。

前回は国内消費を拡大するための「社会システム・デザイン」の議論をしたが、その背景にある、成長が難しく、国の歳入、歳出のバランスも悪い「高齢化社会をどう経営するか」というテーマは日本の最重要課題である。その課題に答える「社会システム・デザイン」はまだまだたくさん考えられる。

 例えば、「価値保障システム」、「二か所居住システム」、「マイグレーション・パス・システム」、「二次市場育成システム」、「食料自給率改善システム」、「拡大首都圏(GTMA)活用システム」などである。時間のかかる「新成長産業」の追求より新「社会システム」開発のほうがよほど成果は早いし経済効果は大きいはずだ。