三番目は「商業芸術集積システム」である。港区を中核にアジア最大の商業芸術センターを形成し、大衆文化の中心として育成するのである。ファッションと商業芸術のテイストの先端性と多様性において日本、特に、巨大経済集積地である東京がアジアで抜きんでている強さを最大限に活用する。ロケーションの有利さから港区を選び、そこにあらゆる商業文化・芸術活動の集積度を高めるためのシステムを組み込む。プロデューサーを決め、そのトータル・デザインに基づいてアーバン・システムのソフトウェアをデザインする。海外からの商業芸術企業家が自由に行き来し、東京で活動しやすいよう規制緩和を行うのもその一つだ。

 また、「パリ・コレ」を超える新しい「ファッション・システム」としての「東京コレクション(東京ファッション・ウィーク)」、アビニヨン、エクス並みの演劇、音楽イベント、それらを結びつける空間としての劇場、広場、レストラン、ホテルなど多様な施設を歩行圏内に集積する。東京で当たることが「お墨付き」を与えることになるこれまでの実績と、新しいテイストを生む創造力のある人材の存在など東京の持つ優位さ、影響力を徹底的に活用する。

 四番目は「外国人観光客リピート・システム」である。「美しい景観」と「多彩な食」の二つのテーマを国民的な関心事に仕立て上げ、世界有数の観光地へ組み立てる。観光事業成功のカギであるリピート客の確保は、実は食の魅力で決まる。東京は多様かつ質の高い料理が評価され、パリよりミシュランの星付きレストランは多いし、各地の食文化も多彩であることを海外に知らしめる。アミノ酸発酵中心のアクワイアード・テイスト(だんだん好きになる飲食物)や創意工夫に富んだ各地の大衆料理をリピーターの確保に組み立てる。

「美しい景観」に関しては、19世紀半ばに日本を訪れたペリー提督やハインリッヒ・シュリーマンが褒め称えた緑豊かな自然の美しさや街並みの良さなど、高度成長期に失った景観の回復を国民の最大関心事にする。「いい公共投資はいい」のであり、電柱の地中化や河川の自然回帰などの公共投資は日本の魅力を増す。「日本の均衡ある発展」という平均化の時代は変わり、これからは地域の特徴を追求するフェーズである。

 気候の違いによる多様性のある自然景観、それと融合した文化風土の厚みで観光客を呼び、世界でも有数の多様な食文化でリピーターを確保する戦略を追求する。そのために自然、人工の両方の景観の美しさの改善と質の向上を地域間競争をテーマとした全国的盛り上がりをプロデュースする。

 五番目が「海外物流取り込みシステム」である。既存の港湾の再構築をし、世界の最先端的企業物流が要求する利便性、生産性の徹底的向上に向けてメリハリのあるデザインが必要だ。すでに計画されている東京・横浜、大阪・神戸、博多・北九州の既存港湾施設の合体だけでは不十分である。ガントリー・クレーンの数で釜山を抜くのが目的ではない。

 船、トラック、鉄道間がスムースにつながるインター・モーダルな物流に注力した最新鋭の「物流システム」という構想に沿って大拡充する。港湾はモーダルチェンジ・ポイントであり、それにかかる時間を最小限にすることでユーザーにとっての生産性の向上を追求する。待ち時間を少なくするための24時間体制の港湾労働体制が重要だ。また、太平洋側から日本海側へのランド・ブリッジ(海上から海上までを陸上で結ぶ輸送)による輸送時間の短縮などのため、JR貨物が海上コンテナを運べるようなコンテナ規格の変更など一貫した物流をデザインする。