視点を変える五つの提案

  一番目は、「医療活動集積システム」である。第6回で述べた「医療システム」の一環として、国内および国外の患者、医療関係者が集まる先端的医療コンプレックスを成田・羽田空港から30分以内の場所と沖縄の那覇空港から同じく30分以内のところに二か所作る。規模も5000床以上の病院を中核に、医師、および、コ・メディカル(医師らの指示の下業務を行う医療従事者)の教育施設、先端医療研究施設、医療・創薬関係企業、ペット病院など医療関係活動の集積場所とする。アメリカのメイヨー・クリニックを参考にすると一施設5万人、二つで10万人程度の雇用創造になる。延べ通院患者数も数百万人規模になり、日本の医療の弱点である医師当たりの症例数増加に結びつく。

  当然、日本人だけでなく、アジア、中東の人々の最も評価する医療コンプレックスとしてデザインする。彼らの来訪、あるいは医療チームの救急派遣のため空港からのアクセスが重要である。英語の共通語化、外国の医師の受け入れと雇用、コ・メディカルの雇用や患者の特別ビザ適用などの運営システムがうまく機能するような特区適用が必要であろう。世界最速の高齢化を逆手に取った加齢学研究の中心になるのは当然であり、また、東洋医学と西洋医学とが連携した治療法開発などにも適している。

  二番目は「電力需給バランス・システム」である。大型定置用リチウム・イオン蓄電池により「在庫」を持てる電力需給ネットワークへの大転換を図る。電力供給の最大の問題は在庫で調整できないため、夏、冬のピーク時対応の発電能力を持ち、需要の変動に合わせて常に供給を調節している。また、自然エネルギーは需要と関係なく勝手に供給が振れる。その間を微調整するのは火力発電であり、このまま自然エネルギー発電が増えれば増えるほど火力発電も増えていくという「悪循環」になり、炭酸ガスの削減にはならないという皮肉な事態になる。

 この状況を本質的に変えるのが「蓄電」である。この機能が十分活用できれば、電力需要のピーク・オフピーク、およびこれから増大する供給側の不安定さを均すことができる。そのような蓄電池が定置用リチウム・イオン蓄電池である現在使われている自動車用とは性能スペックが異なる。

 リチウム・イオン蓄電池にとって代わる電池の革新はあり得るが、その実用化はだいぶ先のことである。従って、現在、本格的製造のための設備投資をしても、償却し終わるだけの時間は十分ある。いくつかの優れた技術が日本にあるが、需要の見通しが立たないため数千億円の大投資をする企業決断ができない状況だ。この蓄電を電力ネットワークに組み込むのは供給側、需要側を巻き込んだ「社会システム」の大転換だから、政府が世界に先駆けて確立して見せる方針を明らかにし、政府保証のファイナンスと普及の支援をする必要があろう。

 この定置型リチウム・イオン蓄電池が普及することで、ピーク時需要レベルが下がるのであれば、電力の需給調整の自由度が増すだけでなく、家庭用蓄電池も安い夜間電力料金が続く限り太陽電池よりも投資回収は早いのである。