しかし、それだけで医者と患者の関係がうまくいくわけではない。すべての患者に対して熟練した医者が処置するという理想的な状況はなく、患者が不満を持つケースがかなり出てくるのはやむをえない。それを調停するために、2つめの駆動エンジンとして、「新たな公的機関による各種調停を支援し、ケース・データを収集するサブシステム」が考えられる。

横山 禎徳
(よこやま・よしのり)
社会システムデザイナー。前川國男建築設計事務所、デイヴィス・ブロディ・アンド・アソシエーツを経て、マッキンゼー・アンド・カンパニー入社マッキンゼー・アンド・カンパニー元東京支社長。現在、三井住友フィナンシャルグループ、三井住友銀行、オリックス生命、社外取締役。東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム(EMP) 企画・ 推進責任者。「社会システム・デザイン」という新しい分野の確立と発展に向けて活動中。

 裁判に訴えることの不毛さとその後の医療に対する必要以上の司法介入の悪影響を考えると、現在、広まりつつあるADR(Alternative Dispute Resolution)、すなわち、裁判所外での調停が有効だ。クローズド・ファイル(「一件落着」のケース資料)を集積し、参考事例を弁護士やメディエーター(調停者)に提供し支援する。調停に関わるメディエーターは病院に雇われているが、中立性という観点からこの公的機関に所属してもらい、新たなキャリアとして確立する。

 3つめの駆動エンジンは「医療基金を収集、蓄積、運用し、医療活動に有効活用するサブシステム」である。政府、厚生労働省は毎年増大していく国民医療費を抑え込もうと躍起になっているが、高齢者の医療費が高いのが増大の理由ではない。

 医療費は死亡直前の数か月に1番かかり、年齢による金額差はそれほどない。年齢別死亡者数が高齢者ほど多いため、高齢者比率の増加によって国民医療費の総額は増えていく。この生物学的現象を抑え込むことはできないが、国の負担をできるだけ増やさない1つの方法は寄付である。

 日本人は寄付をしないという思い込みがあるが、それは間違っている。ちゃんと寄付を集める努力を本気でした経験のないままの「怠惰な結論」でしかない。歴史的に日本人は寄付をしてきた。日本の神社仏閣の大半は寄進によってできたのである。寄付を集めるための努力はあらゆる形で行った。それを取り仕切ったのが勧進元であり、街を回っての宣伝や秘仏の御開帳など考えられるあらゆる寄付集めの努力をしたのである。