まず、帝人のように自社の技術を新しい用途に展開する上で、社外の「知」を活用するケースを考える。これを実現するためには、3つの高い壁を乗り越える必要がある。

 1つ目の壁は、自分たちが活用したい自社の技術が、その用途において社外の人には魅力的に見えないことである。あいにく、どんなに自信のある技術を提案しても、世界には800万人もの技術者がいる。技術を提案された社外の反応は、十中八九、「そこまで優位性が無い」、「オーバースペックでそこまで不要」となることも当然起こりうるし、なかなか社外の協力を得られないこともある。

 2つ目の壁は少し厄介である。自分たちが活用したい技術が、社外の人にとっても魅力的だとする。しかし、その用途を伝えてしまうと、アイデアだけ取られて自分にメリットが返ってこない可能性があると考えられてしまうことだ。

 さらに3つ目の壁は、用途を教えてくれる親切な組織があっても、外部から提案してもらったアイデアと自分たちがやりたいこととが食い違うことだ。昨今、企業は自社が勝てる事業領域をかなり絞って決めているので、これが多発するのは、むしろ当然である。

 しかし、がっかりすることは無い。この3つの壁を一気に乗り越えやすくする方法があり、帝人もこの方法を使ったのである。具体的には「用途の仮説と、その仮説における自社技術の強みを数多く考えて、それを広くアピールする」ということである。

 自社技術の強みが活きる用途に巡り合う確率は低いため、できるだけ多く用途を考えておく必要がある。また、自分で考えた用途をアピールするのであれば、ニーズがある側も「教えて損」ではなく「ピンと来たので活用したい」と考えてくれる。さらに、自社の事業領域を考慮した用途の仮説であれば、100%、そこから外れることも無いわけである。

 ナインシグマは、04~05年に、用途の仮説を挙げずに事業開発アイデアを募るプロジェクトを5件実施したが、1つも事業開発につながらなかった。しかし。11~13年に、用途の仮説を挙げた上で、事業開発パートナーを募るプロジェクトを7件実施したところ、7割のプロジェクトが共同事業化に進んだ。このことからも「用途仮説」の重要性は明らかである。

「用途仮説を考えることが難しい」場合は、テクロスという技術交流サイトの活用をお勧めする。自社技術に合う技術キーワードを選ぶと、自動的にその技術を活用しうる用途とその用途に求められる技術特性が提案される仕組みになっており、技術を登録することによって、ニーズを持つ企業に気付いてもらえる可能性も高まる。

 次に、NTTの事例のような学生の能力の活用だが、こちらは、若い世代の方が適応度の高いIT分野のアイデア出しや、経験値よりスピードと思考力が求められる調査や分析などにおいて成果が期待できる。学生としても、勉学の隙間時間でアルバイトをするのであれば、肉体労働系の業務よりは、実務経験の蓄積にもつながる知的労働の方が望ましいはずである。

 それにもかかわらず、これまで有能な学生の知的能力を効率的に活用できたのは、大学の教授のみであり、一般企業には、学生へのアクセス方法も優れた学生を見極める手段も無かった。

 しかし、今後は、JobUniのように中小企業、ベンチャー企業でも評価の高いトップ大学の大学生や大学院生に1時間単位で知的業務を依頼できるようになっていく。このように、ネットとネット上のサービスの普及に伴い、企業が事業開発に活用できるアイデアやスキルを広く募ることができるようになってきた。このような機会を活用できるかどうかが、企業の事業開発のスピードと成功率を大きく左右するようになると思われる。