3番目の「ライフ・ステージに応じた住み替えサブシステム」は、持ち家を売買することでその時々のライフ・スタイルの要求や好みに応じて住み替えをやりやすくするシステムである。その住み替えは標準型住宅の中古であるかもしれないし、土地を賃借して新築をするのかもしれない。いずれにしても、今の持ち家を売って、新しい家を買うということになる。家を買ってくれる人も自分の家を売るのだろうし、家を売ってくれる人も新しい家を買うために売るのである。この流れをスムースにするのがこのサブシステムの機能である。

横山 禎徳
(よこやま・よしのり)
社会システムデザイナー。前川國男建築設計事務所、デイヴィス・ブロディ・アンド・アソシエーツを経て、マッキンゼー・アンド・カンパニー入社マッキンゼー・アンド・カンパニー元東京支社長。現在、三井住友フィナンシャルグループ、三井住友銀行、オリックス生命、社外取締役。東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム(EMP) 企画・ 推進責任者。「社会システム・デザイン」という新しい分野の確立と発展に向けて活動中。

 新築は別として、中古住宅を買うのであれば住宅の性能評価が必要である。現在、日本には存在していないが、アメリカのファニー・メイ(連邦住宅抵当公庫)には長年活用されてきた性能評価体系が存在する。実際に試してみると大変よくできていることに感心する。住宅の売り手はこの評価体系で査定された証明書を買い手に示す。

 買い手は売り手に支払い能力があることを示す必要がある。現在の住宅は通常の場合、住宅ローンの担保になっているので活用はできない。従って、頭金を銀行のエスクロー勘定(第三者機関を通した決済方法)に入れ、購入金額の足らない部分を数か月のつなぎ融資として銀行から借り、その金額はエスクロー勘定に振り込まれる。その証明書を売り手に見せて支払能力を示すのである。このようなつなぎ融資は無担保であるから、銀行は高い金利をとれる。借り手にとっては不動産取引決済が終わるまでの数か月のことだからそれほどの負担ではない。

 以上、3つのサブシステムの内容を見るといくつかのサブサブシステムに分けて記述したほうがいいことがわかる。これは何層になっても構わない。明確に行動が分かるまで細かく書いていく。

 ここまで見てくると、これらのサブシステム全体がうまく機能するためには土地だけの評価ではなく、上屋も含めて評価する不動産評価システムが必要であることがわかるであろう。世界的には「不動産」、すなわち、プロパティは土地建物一体であり、分けて考えない。自分で上屋、すなわち建物を改良することをプロパティ・インプルーブメントと英語では言うが、これを不動産価値、そして売買価格に反映することが不可欠である。

 このような「プロパティ・インプルーブメントを組み込んだ不動産評価システム」が存在してはじめて上記のサブシステム群が機能するという意味で、これが最も重要な、全体に関わるサブシステムである。

 次回は「社会システム・デザイン」として重要な「医療システム・デザイン」を議論する。

(第6回に続く)

 

【連載バックナンバー】
第1回 「社会システム・デザイン」とは何か
第2回 社会システム・デザインは「身体知」であり「高度技能」である
第3回 悪循環は現象を見るのではなく「中核課題」を捉えよ
第4回 経験とボキャブラリーを駆使して良循環を創造する