住宅供給の良循環を回す「3つの駆動エンジン」

 まず、「住宅の利用価値と資産価値の分離・追求サブシステム」は、これまでの資産価値と利用価値が渾然一体となった持ち家志向から抜け出して自由度を確保するためのサブシステムである。一家の資産の大半が持ち家になっていると、不動産価値が上がってもそれを活用することもできず、また、相続の際の相続税を支払うだけの現金資産もないため物納か売却ということになり、「持ち家政策が持ち家にならない」パラドックスを生んでいた。

 現在のような不動産価値が上がる可能性の少ない時代に、含み資産もできない状況を変える新たな資産形成を作り出すことが必要だ。そのためにはまず、土地の所有から土地の賃借に変えるのが望ましい。現在の50年の定期借地権では期間が中途半端だし、担保価値を銀行が認めてくれないのでもっと期間の長い定期所有権に変える。これは法的措置が必要である。

 借地の場合は土地の取得の場合よりも住宅ローンの支払いは少ないので、その差額の余裕資金を他の資産運用に回すことができる。元本保証だが金利の低い銀行預金ではなく、自己資金でリスクを取って株式や投資信託も活用できる。不動産投資がしたい場合はREIT(不動産投資信託)も活用でき、自分の持ち家に一生縛り付けられる状況から抜け出せるのである。

 次に「新技能工によるメニュー型住宅生産サブシステム」を考えてみよう。上記のような

 終の棲み家としての持ち家ではなく、買い替えることもあるという考えになり、凝りに凝った注文住宅でなくても多少の好みに応じたメニュー型の標準住宅を手に入れてその内装や家具にお金をかけるほうがいいということになる。すなわち、車と同じように多様なモデルから選べばいいということになる。このような標準型住宅生産が広がると、それに対応した新たな技能工を定義することが可能になる。

 かつて80万人以上いた大工が直近では40万人を切るところまで減少しているが、仕事量の減少だけでなく、職種の魅力も影響しているようだ。ここで、新技能工を新しい住宅生産と一体でキャリア・パスも明確なシステムとして組み立てることができれば、教育体系の開発から、標準工法による生産性と品質管理も明確になり、職種としての魅力も増していく。少し、専門的になるが、新築着工数が減る傾向の中で、住宅生産も現在のクローズド・システム(ハウジング・メーカーそれぞれのシステム)から部品生産規模の増大によるコスト・ダウンが図れるオープン・システム(誰もが使える共通システム)に変わるきっかけの基盤作りになるかもしれない。