ゆがんだ住宅事情を良循環に変えるには

 具体的な例として、住宅供給の「良循環」を「駆動」するサブシステムを取り上げてみる。この「良循環」は1990年代の初めに「住宅供給システム」として考えたことだが、ここに示す3つのサブシステムはほとんど実現していないのは残念である。しかし、奇妙なことに、実際にはシステムにはなっていないまま、「住宅供給システム」という言葉だけは定着した。

 ここではあまり詳しく説明しないが、就業形態や生活スタイルの変化によって時代遅れになった持ち家推進政策からメリハリよくギア・チェンジしていないことが住宅に関する中核課題であると考える。

 民生の安定と住宅ストックの質の向上を目指した戦後の持ち家政策は成功し、1970年代には7割近くが持ち家になったのだが、皮肉なことに、同じ家族が代々同じ家に住むのではなく、諸々の理由から一代限りで別の家族に渡り、いい家もそうでない家も木造住宅の法定償却で価値がなくなり壊され、土地は細分化されて、より小さな土地のより小さな家が新しい家族の持ち家になる。一方で賃貸住宅は仮の住まいとして扱われ、長期居住に必要な質を確保するインセンティブが働かない。

 戦後すぐには思いもよらなかった人口の高齢化がこの傾向に拍車をかけている。土地中心で上屋を評価しないから、不動産価値が上がるわけでもないため上屋の改築や手入れをしないまま、住人と一緒に住宅も「老化」していくということも起こっている。新しい住人の流入もなく、かつての新興住宅地全体が劣化して魅力を失い、不動産価値も一層下がっていく。日本全体の住宅ストック改善のための持ち家政策が1970年代までは「良循環」で、その後は住宅ストックが劣化するという「悪循環」に変わったといってもよい。

 この状況を変える「良循環」は、これまでのように住宅の資産価値を重視しほかの価値を犠牲にするのではなく、住宅本来の目的である利用価値を重視し、ライフ・ステージごとに目指す利用価値の変化に応じて住み替える家族が増えていくと、持ち家が個人資産のすべてである状況から解放され、ライフ・スタイルや資産形成の自由度が広がるから、より多くの家族が利用価値を追求するようになるというものである。

 この「良循環」を「駆動するエンジン」としてのサブシステムが、「住宅の利用価値と資産価値の分離・追求サブシステム」、「新技能工によるメニュー型住宅生産サブシステム」、そして「ライフ・ステージに応じた住み替えサブシステム」の3つである。なぜサブシステムと呼ぶかというと、「良循環」全体が「住宅供給システム」であり、その次のレベルのシステムであるからだ。