株主の価値が株式の保有期間に正比例するなら、その価値を計算するのは簡単だ。そして次に、画期的なことを行う――時間的価値に応じて議決権を割り当てるのだ(私は経済的な権利を変えるべきだとは思わない。1株当たりのリターンは等分とする。しかし議決権で調整を行う)。1株当たりの議決権は、株数と保有している日数との積とする。したがって、ある株主が1株を購入して10年間保有した場合、その株主の議決権は3650株分となる。あるデイトレーダーやリスク・アービトラージャー(企業買収の際に起こる株価上昇を見込んで裁定取引を行う投資家)が1株を買って1日だけ保有したら、議決権は1株分だ。

 ある企業の買収が見込まれる場合、リスク・アービトラージャーが30%の株式を取得したとする。その企業が買収に応じるよう強いる、または圧力をかけることにより、手早く稼ぐことがその狙いだ。しかし彼らは30%の議決権を行使できるのではなく、浮動株の3%分しか行使できないかもしれない。すると買収が実現するには、長期の株主が「買収は自分たちの利益にもなる」と判断する必要がある。彼らは実際、買収を阻止する必要はないと考えるかもしれない。長期の株主が「適切である」と判断した時だけ買収が進められることが、ここでの目標である。

 これにより企業の経営陣は、短期的な株主に運命を握られることを恐れずに、長期的な目標に集中できる。そして長期の株主による規律も維持される。もし彼らが満足しなければ、どんなリスク・アービトラージャーよりも大きな議決権を行使することができるのだ。

 時間を基準とした議決の仕組みは、株主価値の創造についてより生産的に考えるうえでも役に立つ。現在では、株主価値(1株当たり)を最もよく表すのは現在の株価だと考えられている。したがって株主価値の創造は、現在の株価が値上がりすることと定義される(配当は再投資されると見なす)。

 これにより、株価が割高になりすぎる という経営上の問題が生じる。例として、ある株式が3カ月のあいだに1株当たり50ドルから90ドルに値上がりしたと考えてみよう。新製品の初動売上げが好調だったためだ。このように将来の業績への期待がバブルのように非現実的な水準まで高まってしまうと、1株90ドルという高い期待に沿う形で経営や投資を行うのは不可能となる。こうした場合、経営陣はリスクの高い動きを取ることが多い。株主のために取るその行動によって、皮肉にも株主価値を減じてしまうのだ。

 時間を基準とした議決の仕組みをつくれば、最長保有の株式から最短保有の株式までを累積し、その中間の株式の購入価格を割り出せる。経営陣は、この中間の価格(先の例では仮に60ドルとする)の資本コスト(仮に10%、すなわち1株当たり6ドル)を上回るリターンをあげようと考える。この株主価値創造の定義により、経営陣は極端でリスクのある動き――つまり、最高値で最後に株式を買った株主へのリターンを稼ぐための行動――を避けられるのである。こうすれば、企業は株式を長期保有しようとする株主のために、長期的な価値創造に集中することができる。最良の組み合わせではないだろうか。


HBR.ORG原文:How To Make Companies Think Long-Term October 3, 2011

 

ロジャー L. マーティン(Roger Martin)
トロント大学 ロットマン・スクール・オブ・マネジメント
学長。
著書に『インテグレ―ティブ・シンキング』などがある。