シャッター商店街が増え続ける理由

 現象の説明の別の例としてはシャッター商店街の増加があげられる。まず、どこかの店主数人が商売を止め、シャッターを下ろしきりにする。そうするとその商店街の賑わいがなくなり人通りが減る。客が減るから商売の成り立たない店が増え、また店を閉める…という「悪循環」が続き、シャッター商店街になってしまうという現象である。実際、日本中でこのようなことが起こっている。すなわち、日常的に見慣れた現象である。

横山 禎徳
(よこやま・よしのり)
社会システムデザイナー。前川國男建築設計事務所、デイヴィス・ブロディ・アンド・アソシエーツを経て、マッキンゼー・アンド・カンパニー入社マッキンゼー・アンド・カンパニー元東京支社長。現在、三井住友フィナンシャルグループ、三井住友銀行、オリックス生命、社外取締役。東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム(EMP) 企画・ 推進責任者。「社会システム・デザイン」という新しい分野の確立と発展に向けて活動中。

 これはしょうがないことなのだろうか。この「悪循環」は現象を説明しているが、その現象が発生する「中核課題」を捉えていないのである。少子化や高齢化のせいだろうか。あるいは人口減のせいだろうか。実際は、大手スーパーやコンビニなどの出現による消費行動の大きな変化についていけなかったのが原因であろう。実際、人口減など今でも影響が出てくるにはまだまだ小さなものだし、シャッター商店街現象は世間が「少子高齢化」を言い出す前の1980年代から起こっている。同じ店舗で永遠にやっていける時代ではない。時代とともに客層も変わるし、客の要求も、好みも変わっていく。そのような変化に対応できなくなると段々と客は離れていくのは当然のことである。

 結局、シャッターを下ろすことになるが、かといって店を誰かに譲って転出することもせず、じっとその店舗兼自宅に住み続ける。年も取ってきて経営能力も意欲もないし、店舗改装をして新しい展開するだけの資金もないし、転居するのもしんどいだけでなくお金もかかるし、親から受け継いだ店で愛着もあるし、住み続けた場合の相続税も安いしで、その店舗は朽ち果てるのみになってしまう。そうやって商店街全体で老化していくのである。個々の商店街の事情は多様だが、全体として、「新陳代謝のメカニズムの不在」が「中核課題」ではないかと思える。店が閉まるからまた店が閉まるという現象を見ていたのでは「中核課題」が見えてこないのである。

 ここで述べてきたような、現象と「中核課題」との違いという視点をもって多くのメディアが提供する悪循環や負のスパイラルと称する図を見てみると現象の説明が多いことに気が付く。しかし、それはメディアの責任ではない。彼らはデザインという次のステップの組み立て作業を想定していない。「社会システム・デザイナー」はそれを想定したうえで「悪循環」を考えているのである。

 次回は「社会システム」というダイナミック・システムをデザインする作業の中核である「良循環」の創造について語る。

(第4回に続く)

 

【連載バックナンバー】
第1回 「社会システム・デザイン」とは何か
第2回  社会システム・デザインは「身体知」であり「高度技能」である