評価システムを考える

 しかし、いくら行動などで示しても、企業の主要なシステムがそれと矛盾していたら台無しになってしまう。この点に関して何よりも重要なのが業績評価システムだ。報酬に結びついているものだけに衆目を集めがちであるが、その重要性は報酬の決定だけに留まらない。人は誰もが成功したいと願い、称賛を求めるものだ。仮に、業績評価システムでよい結果が示されなかったら、誰もががっかりし、もう悪い成績を取らないようにと努める。それにより報酬がどう変わるかにかかわらず。

 ラフリーはCEOに就任すると、上級幹部の業績評価システムの尺度に些細だが重要な変更を加えた。「市場総株主利益(M-TSR)」を「事業総株主利益(O-TSR)」に変えたのだ。M-TSRは3年間の株価上昇と配当をベースに、株主に対する市場でのリターンを測るものだ。前任者から引き継いだこのシステムは、あらかじめ決められたグループの上位3分の1の実績が、ボーナスに結びつくものだった。だから、上級幹部はこの数字に力を入れていた。

 しかし、ラフリーが気づいたのは、M-TSRが高い時期の後、必ず反動が来るということだ。なぜなら、M-TSRが高くなるのは株主の期待感が急激に膨らむからであり、そこからもう1段上げるのはほぼ不可能だからだ。

 O-TSRで測定するのは、事業価値の長期的な改善に関連する3つの指標――売上げの伸び、利益率の向上、資本効率の向上である。そして重要なのは、O-TSRはM-TSRと相関関係があるのだが、それは長期的なものであって短期的な関係ではないということだ。

 O-TSRを用いることにより、幹部は短期的な期待を高めるような施策ではなく、長期的な業績を上げていく仕事に力を入れるようになった。それはP&Gに長期的に関心を持つ株主の利益にもなった。

 個人として、また企業として重要な行動を示し、合わせて業績評価システムを調整すれば、どんなCEOでも長期的な顧客価値・社会的価値に組織を集中させることができる。それは長期保有を考える株主にとっても利益となる。長期の保有に関心がない株主は、それなりに扱われるべきだ。社会への一種の寄生生物として。


HBR.ORG原文:CEOs Must Model the Behavior for Creating Societal Value September 26, 2011

 

ロジャー L. マーティン(Roger Martin)
トロント大学 ロットマン・スクール・オブ・マネジメント
学長。
著書に『インテグレ―ティブ・シンキング』などがある。