これら3つのステップを実践するのは、簡単ではない。人が本来持つ感性(もしくは理性)に抗うことになるからだ。すなわち、私たちは不平ばかり言いつのる人に対して、ネガティブな感情を抱くという性質を持つ。

 私がダンと最初に話した時、彼はチームの数人を解雇するつもりでいた。もしそうしていたら、残ったメンバーのネガティブ志向を増幅させるだけに終わっていただろう。

 代わりに彼は、人々の言葉に耳を傾け始め、そのネガティブな感情を受け止めていった。すると、チームが抱える不満の陰には恐れの感情があることがわかった。会社は最近解雇を実行したため、残った者は「次は自分の番ではないか」と不安を覚えていたのだ。(ステップ1)

 まったく心配ない、という確約を与えることは、ダンにはできなかった。とりわけ彼自身が、不満を言いつのる部下数人を解雇しようとしていたのだから。しかし彼は、相手の不安に耳を傾け、その一部を共有した。解雇への恐れではなく、達成すべき課題の多さと人員の少なさに関する不安に、理解を示した。つまり、ダンはチームとともにネガティブな気持ちを分かち合った。(ステップ2)

 その後、ダンはチームが持ついくつかのポジティブな要素に注意を向け、光を当てた。巧みなリスク管理、複雑な営業プロセスにおける協力体制、クライアントとの見事な連携など、どれも会社の成長を促し社員の仕事を安定させる要素だ。つまり、ダンとチームはともにポジティブな要素を分かち合った。(ステップ3)

 以前のダンは、人のネガティブな部分を強調し批判することに余念がなかった。しかしいまは、人のポジティブな部分を見つけ称賛する機会を逃さずとらえるようになった。この行動は効果てきめんであった。営業部の雰囲気は変わり、チームは一致団結して、創業以来最大の顧客を獲得することに成功した。

 私自身についていえば――言うは易く行うは難し、というのが正直なところだ。他人の不平不満に対して、つい冷静さを失っていら立ちを覚えることもある。しかしこの3つのステップに従うことで、とても助けられている。そして、その重要性を常に思い出させてくれる妻の存在は、本当にありがたい。


HBR.ORG原文:How to Respond to Negativity September 28, 2012

 

ピーター・ブレグマン(Peter Bregman)
CEOおよびリーダーにアドバイスを行う戦略コンサルタント。最新刊は『最高の人生と仕事をつかむ18分の法則』(日本経済新聞出版社)。