予測市場でリスクヘッジ

 投資家が、予測市場を用いてリスクを回避できるとしたらどうだろうか? その一例が、2008年のアメリカ大統領選挙に関する予測市場だ。6月上旬、ヒラリー・クリントンが敗北し、バラク・オバマが事実上の民主党候補になると、3つの民営予測市場──イントレード、IEM、ベットフェア──の株価は同じ動きを見せた。唯一の例外は、9月22日に価格差が開いたことだ。ベットフェアとイントレードの「オバマ勝利」株の価格が急に10セントも開き、それぞれ51セントと61セントになったのだ。すると、価格差に目を付けたアービトラージャー(訳注/株式などで、価格の上がり下がりを予測するのではなく、一時的な価格差を利用してリスクなく利益を上げる〔裁定取引〕投資家)たちは、市場価格が一致するまで、51セントで買い、61セントで売りつづけた。オバマ株の最終価格がその中間にありさえすれば、彼らはリスクなしで利益を上げられる。そして、実際にそうなった。

 イントレードのジョン・デラニーの調査によれば、ある投資家がリスクを抑えるため、市場を動かすほど大規模にジョン・マケインに投資したのだという。どういうことか? たとえば、その投資家がオバマ勝利という前提で医療関連の株式を購入していたとすると、同時に選挙予測の市場でマケインの証券を購入することで、投資のヘッジングを行なうことができる。オバマが勝利すれば、投資家は医療株では儲かるが、予測市場への投資額は失う。オバマが敗北すればその逆になる。

 このケースでは、実際にヘッジングを行なったのは、セントリスト・メッセンジャー(Centrist Messenger)という会社だったのではないかといわれている。この会社は、顧客に政治広告を販売し、顧客の応援する候補者が負けた場合には料金を返金するというビジネスを営んでいる。セントリストは、イントレードを使ってリスクをヘッジしていると公表している。たとえば、マケインの広告よりもオバマの広告の方が売れた場合、会社はマケインの勝利に対して過剰なリスクを抱えることになる。そこで、イントレードでマケイン株を購入し、オバマ株を売却すればいいというわけだ。