ミューチュアル・ファン・マーケットが生み出したもの

 ミューチュアル・ファン・マーケットは、開始から2年間で、50もの革新的な製品、サービス、プロセスのアイデアを生み出してきた。そのうち12のアイデアが、会社の新たな知的財産や特許につながった。

 ライト・ソリューションズで最初に成功した予測プロジェクトは、海軍や国土安全保障省の人々が、緊急時により賢明な意思決定を行なえるようにするための3D視覚化テクノロジーだ(Xboxのイメージに近い)。このアイデアが「VIEW」というティッカー名で提案された当初、ジョー・マリーノはほとんど期待していなかった。しかし、市場の支持は根強かったため、VIEWはあっという間に開発とプロトタイプの段階まで進んだ。マリーノはこのプロジェクトについて、「トップの人間だけに判断を頼っていたら、このプロジェクトは生まれていただろうか? 絶対にノーだ。だが、多くの人たちがこのアイデアを支持しているという事実は、無視しようがなかったのだ」と指摘している。こうして生まれた「ライト・ビュー(Rite-View)」という製品は、製品発売年度のライト・ソリューションズの年間売上の30パーセントを占めた。企業が成長しても、ミューチュアル・ファン・マーケットの製品は総売上の20パーセントを安定して占めている。

 ミューチュアル・ファン・マーケットは、既存の製品の新たな用途も生み出している。同社のテクノロジーのひとつとして、リアルタイムに画像を処理する軍事用のパターン認識アルゴリズムがあった。すると、意外な人物──会社の秘書のレベッカ・ホッシュ──があるアイデアを提案した。彼女はエンジニアリングについてはまったくの素人だったが、このアルゴリズムを利用して歴史や数学などを教える楽しいゲームが作れるのではないかと考えた。そこで、彼女はエクスペクタスを作成し、担当するプロフェットと協力して「ウィン・プレイ・ラーン(Win/Play/Learn)」(ティッカー・シンボル「WPL」)というバウ・ジョーンズ株式を発行した。この株式は企業の投資家とボランティアの両方を惹き付けた。ライト・ソリューションズは、WPLアーキテクチャの開発に2万ドルを投じ、ロードアイランド州を拠点とするおもちゃ会社ハズブロにアーキテクチャを提供した。ハズブロはそのアーキテクチャをもとにVuGoマルチメディア・システム(訳注/SDカードを使って動画、音楽、写真などを再生できるポータブル・プレーヤー)を開発し、2006年初頭に発売した。

 このアーキテクチャにより、ライト・ソリューションズはその後の契約で100万ドル以上の売上を得た。そして、その後の2年間でWPLアーキテクチャから得られた推定利益の25パーセントの大部分が、ホッシュのボーナスに充てられた。 さらに、ライト・ソリューションズの従業員は、ミューチュアル・ファン・マーケット史上もっとも急上昇した株式のひとつを発行した──ミューチュアル・ファン・マーケットそのものだ(シンボルはSTK)。ほかの会社の幹部たちから、システムに関する問い合わせが相次いだことがきっかけで、ソフトウェアをライト・ソリューションズの一製品としてライセンス供与してはどうかというアイデアが出たのだ。2006年半ば、ライト・ソリューションズは「ミューチュアル・ファン」という製品を発売し、すぐに数社の多国籍企業にライセンスを供与した。ライセンシーのひとつがブラウン大学だ。同大学のグレゴリー・クローフォード教授は、共同起業に関するカリキュラムを設置し、新しいビジネスを創出するプラットフォームとして「イノベーション・エンジン」を利用したいと考えた。

 さらに2010年、ライト・ソリューションズはレベッカ・ホッシュが以前に提案したWPLのアイデアで、思わぬ臨時収入を得た。ミューチュアル・ファンに興味を持ち、すっかり惚れ込んだハズブロが、グラフィカル・ユーザー・インターフェイスに自社の「モノポリー」のテーマを取り入れ、ミューチュアル・ファンをリメイクしたいと申し入れてきたのだ。そして、2011年後半に「アイデア・モノポリー」という製品が発売された。