技術だけでなく、文化風土を考慮しているか?

「社会システム」も多様である。確かに技術中心のものも多い。「通信システム」とか「交通システム」などがそうである。しかし、「訴訟システム」、「教育システム」のように技術よりも社会の価値観の方が重要なシステムもある。「医療システム」はその中間である。多くの「社会システム」はこのように技術と社会の価値観の両方の重要度の違いでいろいろなタイプがある。また、「電力供給システム」はこれまでの技術中心から原発の問題で、最近は社会の価値観の影響の強いシステムに変わっている。

 先ほどの「医療システム」を例にとってみよう。技術進歩によって高度な治療が可能になっていくことは知られているが、一方でこれまでの歴史や社会の風土、価値観によっていろいろ影響を受ける。臓器移植の技術は急速に進歩しているが、それを大々的にやるかどうかはその社会の価値観による。現実にアメリカほど日本では臓器移植はやられていないのはその影響である。脳死の定義も両国で異なることはご存知の通りだ。

 すなわち、このような文化風土を考慮したシステムが「社会システム」なのである。従って、他国の「社会システム」をそのまま持ってくることは不可能だ。どんなに優れていても先進事例をそのまま取り入れるわけにはいかない。自分で苦労しながら自国の文化風土に即した「社会システム」をデザインしないといけないのである。すでに欧米先進国という表現は死語になっている。そういう発想から脱却することも「社会システム・デザイン」という思考の意味でもある。

 次回からはこのような「社会システム・デザイン」のアプローチ、そしてその応用と期待成果などの話を展開していくつもりである。

(第2回に続く)

横山 禎徳(よこやま・よしのり)
社会システムデザイナー。前川國男建築設計事務所、デイヴィス・ブロディ・アンド・アソシエーツを経て、マッキンゼー・アンド・カンパニー入社マッキンゼー・アンド・カンパニー元東京支社長。現在、三井住友フィナンシャルグループ、三井住友銀行、オリックス生命、社外取締役。東京大学エグゼクティブ・マネジメント・プログラム(EMP)企画・ 推進責任者。「社会システム・デザイン」という新しい分野の確立と発展に向けて活動中。
主な著書に『東大エグゼクティブ・マネジメント 課題設定の思考力 』(共著、東京大学出版会)、『循環思考 』(東洋経済新報社)、『アメリカと比べない日本』(ファーストプレス)、『「豊なる衰退」と日本の戦略』(ダイヤモンド社)、『マッキンゼー合従連衡戦略』(共著、東洋経済新報社)、『成長創出革命』(ダイヤモンド社)、『コーポレートアーキテクチャー』(共著、ダイヤモンド社)、『企業変身願望-Corporate Metamorphosis Design』(NTT 出版)。その他、企業戦略、組織デザイン、ファイナンス、戦略的提携、企業変革、社会システム・デザインに関する記事多数。