起業家は本当に「リスクをいとわない」人種
なのか?

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 もう1つ、起業家がすすんで受け入れるリスクがある。自分が思い描く成果を実現するためには、傷つくことをいとわないということだ。ジョン・ヘーゲルが言うように、恥をかくこと、冷笑されること、疑いの目を向けられること、そして屈辱を味わうことでさえも、実際に挑戦しないことのリスクに比べれば取るに足らない。ベンチャー投資家のアンソニー・チェンは、これを次のように的確に言い表している――「傷つくことをいとわない、という起業家の無防備な姿勢は、人々の注目を集めたいという気持ちから生じているのではない。注目されることでチャンスをつかもうとしているのだ。つまり、より有意義な役割を担ったり、変化をもたらしたり、金銭的な利益を増やしたりする可能性である」

 以上のように、私は己が信じる成果を追求する起業家たちの、激しい情熱と使命感を数多く目のあたりにしてきた。成果を追求することは、彼らにとってのアイデンティティであり、存在理由である。リ スクに応じた正当な報酬が重要であることは、私も承知している。食べ物や住居、教育、健康はとても大切な「結果」だ。しかし私は、自分の家族、友人、そして顧客のことを考えた場合、結果だけでなく成果を出さなくてはならないと思っている。彼らの人生、そして彼らが責任を負う相手や出会う人々の人生に、ポジティブで素晴らしい影響を及ぼすことが必要なのだ。それができなければ、私の人生は結果の連続にすぎない。どんなに大きな結果であろうと成果につながらなければ、私にとっては大きな失敗となる。

 この理論には科学的な検証が必要だろうが、大筋において正しいことは実証されるに違いない。情熱や使命感を追求しないこと、物質的な豊かさだけを追求し人生の意義を顧みないことは、何よりも大きなリスクである。

 

HBR.ORG原文:Are Entrepreneurs Really More Comfortable with Risk? September 28, 2012
 

デボラ・ミルズ・ スコフィールド
(Deborah Mills Scofield)

アーリーステージ専門のベンチャー投資会社、グレンガリーのコンサルタント兼パートナー。ブラウン大学客員教授、オーバリン大学講師。

 

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