意図せざる自社の社会性

 結局のところ営利企業の本来的機能は、「社会に存在するニーズの充足」といういわば普遍性の高い目的を、「資本主義および市場原理に基づく経済効率性(利益創出)の追求」というしくみ・手段が有効な範疇において、自社の得意なやり方(経営資源配分の方法)で達成し、経済的利益の獲得を以てその活動を維持拡大することにある。この原則はBOP (Base of the Pyramid)であれ、ボリュームゾーンであれ、先進国市場であれ、ビジネスである以上同じことである。

 しかし、この営利企業という「しくみ」(いわば手段)を「いかなる意図・狙いを果たすために用いるか」に関しては、個々の企業・事業によって違いがある。それが戦略的意図(第4回参照)であり、さかのぼれば独自の企業ミッションや経営理念のような形で表現されている。これは「自社の社会性」の中でもすでに当事者が認知する意図的な部分である。

 一方で意図せざる自社の社会性というものも存在する。前述の社会経済的収束能力とは、こうした意図せざる波及効果としての社会性をも正確に評価し尽くし、それを自社の事業環境の改善に役立てることができる能力のことである。

 次の最終回は、今回触れた因果関係図に登場した社会的成果と経済的成果の複合指標の可能性について検討する。

 

(ⅰ)岡田正大(2013) 「開発途上国低所得層市場(BOP層市場)への参入における戦略的提携の形成について」『慶應経営論集』vol.30 no.1, pp.1-39.
(ⅱ)「非伝統的プレーヤー」とは、先進国ビジネスで通常想定される伝統的プレーヤー(=営利企業)ではない、という意。つまり多様な非営利組織のことである。
(ⅲ)ビジネスエコシステムに関しては、下記の3論文を参照:ムーア 『企業“生態系”4つの発展段階:エコロジーから企業競争をみる』ダイヤモンド・ハーバードビジネスレビュー 1993年 9月号、イアンシティ&レビーン『利己的な競争戦略の限界―キーストーン戦略:ビジネス生態系の掟』ダイヤモンド・ハーバードビジネスレビュー2004年5月号、カンター『産学官連携の成長戦略―競争優位のビジネス生態系』ダイヤモンド・ハーバードビジネスレビュー2012年6月号.
(ⅳ)バーニー『企業戦略論【上】基本編 競争優位の構築と持続』第5章 ダイヤモンド社