いつでも、優先すべき重要な仕事と、そうでない仕事がある。問題は、それが何かわからないために、次のどちらかを引き起こしてしまうことだ――すべての仕事に全力を注いでしまうか、重要事項を見落としてしまうか。

 重要ではない物事を最小限に抑えることが、チャンスにつながる。より戦略的に時間を使うことが、昇給の成否を分けるのだ。

 そこで、次の公式を提案したい。

1.今年は、待遇に関する先方の提案を、交渉なしで受け入れる。もしそれが適切な待遇であれば、この不況下でなされた決定に感謝を表明しよう。そして、いま現在は昇給よりも、自分がどう組織に価値を提供できるかに関心がある、と説明しよう。これを対話の主題とするのだ。

2.自分が会社の株主であるかのように、多くの質問をする。会社の戦略について。経営陣は何を最も懸念しているのか。自分の属する部門は会社の収益や利益にどう影響しているのか。自分の直属の上司にとって、何が重要なのか。そして、売上げや利益に自分が貢献できることは何かを話し合い、2~3の優先課題を特定しよう。この対話の後、あなたは昇給に値する仕事に特化して取り組めるはずだ。

3.話し合いで明らかとなった2~3の優先課題を、To Doリストの1番上に入れる。努力の大部分が、その課題の達成と組織への貢献に結びつくようにする。To Doリストを上司に見せ、優先すべき重要事項と組織へのインパクトについて認識を共有しよう。そしてあなたが生み出すインパクトを、可能な限り定量化しておく。もし上司が優先課題とは関係ない仕事を頼んできたら、話し合って辞退する。もちろん、時には重要でない仕事をする必要も生じるだろう。しかし戦略的選択によって、それらを最小限に抑えることだ。ほどほどにこなす程度でかまわない――どのみち、それらは些事にすぎないのだから。

 優先課題に集中して6カ月ほど経つ頃には、上司と新たな話し合いをする準備が整っているはずだ。自分が生み出した成果を明らかにして、最も重要な課題において多くの価値を創造したことを証明する機会である。

 この話し合いで、実際に昇給を願い出てかまわない。多くの企業は予算配分と昇進人事を6カ月ごとに検討するため、これはよいタイミングとなる。

 この公式の最大の特長は、単なるごまかしではなく、全員に実際に利益をもたらすということだ。最も重要なことだけに集中すれば――たとえそれが、上司からのどうでもいい仕事の依頼を断ることになるとしても――最終的にあなたはより生産的になり、上司も会社も生産性を高めることになる。これこそ最も確実な方法だ。あなたの職を安定させ、昇進のチャンスも増える。

「じゃあ、コレステロールが高いと判明したわけだから、食生活を変えるのかい?」と私はデイブに尋ねた。

「いや。薬を飲むよ。それで何日かしたら数値が下がるから、また好きなように食べられる」デイブはいつもの調子でこう答えた。

 おそらく、私は物事に対して難しい方法を選ぶのが好きなのかもしれない。しかし私の知る限り、昇給の特効薬はない。それでも、多くの業界で賃金が伸び悩んでいるこの時期には、試すべき公式があると知っておくのは悪くないだろう。


HBR.ORG原文:How to Get a Raise When Budgets Are Tight December 14, 2011

 

ピーター・ブレグマン(Peter Bregman)
CEOおよびリーダーにアドバイスを行う戦略コンサルタント。最新刊は『最高の人生と仕事をつかむ18分の法則』(日本経済新聞出版社)。