DeNAで山ほど失敗して学んだ
新規事業企画のコツはないというコツ

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 事業企画は積み木で城を作ることに似ていると思う。城の形の検討には独創性が必要だが、素早く安定感を持って積むためには、ありふれた積み木でガンガン土台を作ることが先決だ。良い形の積み木がなかったら、誰かが同じような状況で使ったものを試せばいい。それすらなかった時に始めて自分で作ることを考えべきだ。自分で木から削りだして作る積み木は、概ねいびつで、強度も不明でつくるのも時間がかかる。

 しかし「新しい」ことには魔力がある。ついつい自分で削りだしたくなってしまうが、これが怖い。まったく新しいサービスでも新しい積み木で作る必要はない。

 比喩により逆に意味が分かりにくくなる本末転倒感を感じつつ、要はそういうことだ。僕自身「面白アイデア」を考えるのが好きで、油断すると社内でも連日のように披露して面倒がられる。特にサービスの初期段階では、できる限り新しい要素を入れすぎないよう、ぐっとこらえている(でも往々に発表してしまう)。

 他にも、いわゆるコツだと感じるようなものはあるにはある。「DeNAで学んだ新規事業20の不格好なコツ」と称してコバンザメ作戦で出版したくなるぐらいだ。

 しかし、実際にリストに書き出してみて項目を眺めていると、あまりに状況次第なことや、個々人のスタイルに依存するものが多い。つまり、一般化しにくい。そもそも、あらゆる状況に当てはまるような普遍的なコツがあるぐらいなら、僕もここまで苦労していないわけであり、先に述べた「検討しすぎるな」「極力発明するな」というのだって、自らへの戒めに近い。

 感性だけを元にして大ヒットを飛ばせれば、どれだけ楽しいかと思う。そして、そうして成功するサービスが世の中に数多く存在することも承知している。しかし、少なくても僕には自信がないし、多くの人にとって難易度が高すぎると思う。

 市場に受け入れられる感性は移ろいやすい。ジョブズのような枯渇しない才能を持つヒットメーカーは極めてレアケースで、だからこそ伝説なのだ。

 小さな実験が可能でデータを丸ごととれるデジタルの特性を生かして、一歩一歩勝つ可能性を高めながらチューンしていき、身をよじりながら成功を探すアプローチがネットビジネスには本来向いている。それは天才のひらめきではなく、合理性と、手間を惜しまない努力と、そして不確実な中でも始める勇気であるように思う。もしかしたら、それこそが新規事業立ち上げのコツなのかもしれない。

 次回は、僕がロンドンでやっているQuipperというサービスについて書きたい。

 

【連載バックナンバー】
第1回「DeNA起業に参加したのは南場さんと川田さんと珍道中を楽しみたかったから」

今月のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー