DeNA起業に参加したのは
南場さんと川田さんと珍道中を楽しみたかったから

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 そもそも以前から起業に興味はあった。大学時代も同級生の木南(陽介)氏と一緒に、留学生の語学スクール派遣、ネットベンチャーのISP事業企画、木南を社長とする会社設立など、学生ビジネスに手を染めていた。

 その後マッキンゼーに入ってからも、気の合う同期と一緒に、医療やリテール領域での新しいビジネスモデルを自主研究していた。元来、そういう「立ち上げ」や「新規事業」が趣味的に好きなのだと思う。だから常に起業というか、新サービスには興味深々だったのだ。

渡辺 雅之氏

 加えて、タイミングも合った。ちょうどその頃、南場さんの計らいにより、あるコンサルティングで、提案・契約・チーム組成・検討・最終プレゼンという一連の流れに主担当として関わることができた。小さな案件ではあったが、とにもかくにも一気通貫でコンサルティングサービスを提供する経験をしたことで、逆にこのままマッキンゼーに留まることの怖さを何となく感じ始めていた。今思えば、居心地が良すぎて、若くしてコンサルティング以外の仕事ができなくなってしまう恐怖だったのかもしれない。

 そのような個人的背景もあり、南場さんと川田さんが一緒に起業するということであれば、そこに参加するのも一興だと思って、とりあえず手伝いから始めようと決意したのが1999年の春である。止むにやまれぬ起業への熱い思いからでもなく、最初から長期コミットをしたわけでもない。しかし参加を決めた瞬間から、すぐに新しいことを始めたがる気が多い僕に対し、南場さんからは次々と難しくも面白い課題が放られ続けた。それらを機嫌よく打ち返しているうちに時が流れ、最終的にDeNAから卒業するのは12年後の2010年になる。

 なぜDeNA起業に参加したか。よく聞かれる質問である。

 先に述べたように、元々「その気(け)」があったというのはある。まだ参加を決めた当時は24歳と若かったし、1年ぐらい遊んでも問題ないだろうという打算もあった。さらに、1999年当時は世間で「ネットブーム」と呼ばれ、ネットビジネスを始めるのが何やら格好良いというような風潮が背を押したのも事実だ。

 だが、1番大きい理由が何かと問われれば、ドクター川田と南場さんという凸凹コンビが起業すると聞いて、単純に面白そうだと思ったことだろう。正直、分野は何でもよかったし、具体的な成功のイメージもあまりなかった。ただ、愉快な珍道中を楽しめる旅に参加できるのではないかという期待があった。

 結果として長きに渡って期待以上の面白い体験ができたのは間違いない。その意味でも南場さん、川田さんには今でも感謝の念に堪えないわけだが、その旅の詳細は先に出版された南場さんの『不格好経営』に譲る。

 次回は、DeNAで一貫して僕が関わった新規事業において感じたコツのようなものを書いてみたい。
 

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