起業家が「幸運」を呼び込む方法

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 ただし、我々が定義する「運」とは、単なる「まぐれ当たり」だけを指すのではない。インタビューした起業家や創業者の多くは、運を呼び込むコツを心得ていた。彼らは、運がよい状況をみずからつくり影響を及ぼす、幸運を呼ぶ姿勢を持っているのだ。その姿勢の根底にあるのは、未知のことが数多くあると信じる謙虚さである。その上に、新しい体験を貪欲に吸収する知的好奇心がある。そして最終的には、楽観的思考がモチベーションの原動力となる。今までと違ったやり方で――よりうまく、より早く、より美しく――行うことは可能であり必須であるという信念だ。「幸運を呼ぶ姿勢」の持ち主は、物事がうまくいくであろう理由を、うまくいかない理由よりも先に考える。

 しかし、この姿勢を成功に結びつけるためには、幸運を呼ぶネットワークを築く必要がある。私は先日ラスベガスを訪れ、ザッポスのCEOトニー・シェイが支援するダウンタウン・プロジェクトを見てきた(ところでトニー・シェイも、運は自身の成功において中心的役割を果たしていると公言している)。このプロジェクトは、起業家マインドとアイデアに満ちたコミュニティを構築して、ラスベガスを中心から変えていこうという取り組みである。シェイと彼のチームは、取り組みの成功を目指すなかで「偶然のつながり」を重視し、そのような出会いを促進することに努めている。この偶然の出会いこそ、我々が言う「幸運を呼ぶネットワーク」である。

 真に幸運を呼ぶネットワークを築ける人物には、共通する特徴が見られる――無防備さ誠実さ寛大さオープンな態度である。そのような人物には、しかるべき相手にしかるべきタイミングで偶然出会うような傾向が見られるのだ。幸運を呼ぶネットワークはあらかじめ計画できるものではなく、仕事上の必要に応じて相手を選んで築く人脈ではない。好奇心と友情から生まれ、不思議にも後になってその人が重要な意味を持つことになるという人間関係だ。このネットワークに含まれる関係性や出会いに、どれほど正味現在価値や戦略的適合性があるかははっきりしないものだ。しかしオープンな態度でそれらの人間関係を受け入れる人は、往々にして意図せぬ恩恵にあずかっている。我々の調査では、「運重視型」であった人々の86%が、成功のカギとして「新しい物事や人に対するオープンな態度」と答えている。

「運がいい」とされる人はおそらく、自覚的か否かにかかわらず、「幸運を呼ぶ姿勢とネットワーク」の原則に従って行動しているのではないだろうか。幸運な人は謙虚で、知的好奇心を持ち、楽観的だ。そして、ご機嫌取りや計算ずく人間関係ではなく、ごく自然に、誠実で寛大な態度で、面倒見のよさや思いやりの心を通じて、素晴らしいネットワークを築いている。大抵の場合、「運重視型」の起業家は、人々が自然と好きになり憧れるような人物なのだ。私たち皆がそうでれば、どんなにいいだろう。


HBR.ORG原文:The Secrets to Building a Lucky Network July 9, 2012
 

アンソニー K・チェン(Anthony K. Tjan)
ベンチャーキャピタル会社Cue Ballの創業者、CEO兼共同経営者。コンサルティング会社Parthenonの副会長も務める。代表作に共著Heart, Smarts, Guts, and Luck(HBR Press)がある。

 

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