対人関係にまつわるすべての問題に対して、何もしないのがよいわけではない。問題に真正面から取り組むべき時も往々にしてあるだろう。水面下にある禍根に目を向け、オープンに対処することは非常に有効だ。私は議論の余地すらない難題について話し合うことが大好きだし、それが素晴らしい効果をもたらすのも経験してきた。

 しかし、どうでもいいことを見過ごすことで、無用ないさかいをどれほど避けられたかを考えてみよう。相手の弱みに、気づかないふりをすればよかったかもしれない。反省と謝罪を要求せずに、ただ許すべきだった時もあるだろう。

 つまり、こじれた人間関係を修復する最善の方法は、時には、何もしないことなのだ。

 では、何かをすべき時と、何もしない時をどうやって決めればよいのか。

「たくさんの治療が施される病気は、治る見込みがない」とチェーホフは書き記している。過去の経験則やデータに鑑みて、複数の解決策があるがどれも決定的ではないことが明らかである場合、何もしないことが最善の方策となる。

 また、2つか3つの解決法を試してみて効果がない時は、何もしないという選択がベストなのかもしれない。

 肘の痛みがやんでから、2年ほど経った。しかし実を言えば、迷信深い私は少し心配している。何もしないことで腱炎を克服した、とおおっぴらにここで宣言することで、なぜだかまた痛みがぶり返すのでは、と恐れている。

 それが起きないといいのだが、もしまたそうなったら、今回はやるべきことがわかっている――何もしないことだ。


HBR.ORG原文:When Nothing Works December 5, 2011

 

ピーター・ブレグマン(Peter Bregman)
CEOおよびリーダーにアドバイスを行う戦略コンサルタント。最新刊は『最高の人生と仕事をつかむ18分の法則』(日本経済新聞出版社)。