「35歳で、ミドリムシとともに立つ」

 僕はこのときに、自分の「天命」を知った。

 それは「ミドリムシが地球を救う」ことを手助けすることである。

 あくまで「ミドリムシが」救うのであり、僕がミドリムシというバイオテクノロジーを使って救うのではない。主人公は、ミドリムシだ。

 5億年前から、ミドリムシは地球を救い続け、そしてこれからも地球を救うのだ。

 ──自分はその手助けを、人生の目標としよう。

 このとき、そう決意した。

 しかしそのためには、「ほぼ絶対に不可能」と言われるミドリムシの大量培養を成功させなければならない。

 中野先生に「僕と鈴木が培養の研究を再び始めたとして、どれくらいかかりそうでしょうか」と尋ねたところ、「10年は覚悟したほうがいい」と言われた。

 そのとき、僕は21歳。10年後の自分は31歳だ。培養に成功してからも、ビジネスとして軌道に乗せるためには数年はかかるだろう。

 そこで「35歳で、ミドリムシとともに立つ」と心に決めた。このときから、僕とユーグレナの歴史が始まった。

 ……と、格好つけて言ってみたが、「35歳」とだいぶ先の未来に目標を定めたのは、自分自身が果たして本当にできるかどうか、心の中で半信半疑だったからだ。前にも書いたが、僕は生まれついてのリーダーではない。

「これをやりたい!」と思いついても、どうすればそれが実行できるかわからず、いつも誰かに助けてもらってどうにかやってきた。

 このときも鈴木という天才がいたからこそ、ミドリムシで栄養素普及ビジネスを実現する、という目標を定めることができたといえる。この先に、どういう苦難が待ち受けているか、この時点では当然のことながら、まったく見えていなかった。 
 

 

【書籍のご案内】

『僕はミドリムシで世界を救うことに決めました』
~東大発バイオベンチャー「ユーグレナ」のとてつもない挑戦

 いま日本に、世界から注目を集めるバイオベンチャーがある。名は、株式会社ユーグレナ。「ミドリムシ」の大量培養技術を核に、世界の食料問題、エネルギー問題、環境問題を一気に解決しようと目論む、東大発ベンチャーだ。そのユーグレナを創業した出雲充氏が、起業に至る7年と、起業してからの7年を初めて語る。


【目次】
はじめに―くだらないものなんて、ない。
第1章 問題と、自らの無知を知るということ
第2章 出会いと、最初の一歩を踏み出すということ
第3章 起業と、チャンスを逃さずに迷いを振り切るということ
第4章 テクノロジーと、それを継承するということ
第5章 試練と、伝える努力でそれを乗り越えるということ
第6章 未来と、ハイブリッドであるということ
おわりに―ミドリムシに教えてもらった、大切なこと

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