5億年前から地球を支えてきたミドリムシ

 僕たちが生きるこの世界の食物連鎖は、実はミドリムシなどの微生物によって支えられている。自然界に存在するミドリムシが、太陽エネルギーを吸収していろんな栄養素を作り出し、ミジンコや他の微生物がそれを食べて生活する。そしてそのミジンコを、イワシなどのより大きな魚が食べて、さらにマグロなどの大型の魚類がイワシを食べる。

 僕たちが魚を食べることで体に取り入れているDHAという栄養素も、元をたどればミドリムシなどによって生産されている。ミドリムシが持つ栄養素が、食物連鎖を通じて、あらゆる動物の成長を支えているのだ。そしてその動物たちも、死んだあとは微生物によって分解されて、海中の藻類や地上の植物たちに吸収されていく。つまりミドリムシは、すべての食物の原点なのである。

 理科の授業で習った通り、その辺の池や川を覗けばミドリムシを見つけることはすぐにできる。自然界にミドリムシは大量に存在しているが、それだけを純粋に人工的に培養するのは、極めて難しい生き物でもある。何しろ、ミドリムシばかりが入った実験容器の中は、他の微生物から見ればごちそうそのもの。少しでも油断して侵入を許せば、あっという間に他の微生物に食べ尽くされてしまうのだ。

 この地球上で5億年前から、常に食べられ続けることで世界を支えてきたミドリムシ。5億年前にミドリムシが地球にデビューしたときから、いろんな生物がミドリムシの栄養を食べて進化してきた。

 ミドリムシの仲間である藻類が出現する前の地球には、バクテリアしか存在しない。陸上には生物が存在せず、大気の成分のほとんどは二酸化炭素だった。しかしあるときミドリムシが海に生まれて、ほかの藻類と一緒に、少しずつ一生懸命に光合成をすることで、CO2を酸素にしていった。そして大気に含まれる酸素濃度が15~20パーセントになったおかげで、生き物は水中から地上へと出ていけるようになったのだ。

 魚はやがて両生類へと進化し、爬虫類、鳥類、哺乳類へと続く。人類が登場するまでのその間、4億9900万年もの年月がかかっている。

 つまり我々人類も、ミドリムシがいなかったら、存在していないのだ。ミドリムシは5億年前から地球を救ってくれていたのである。