ショールーミングが価格設定やプロモーション戦略を形骸化させる一方で、ブランドの持つ文脈と宣伝文句の効力も薄れている。この傾向はウイルスのように伝播しており、マーケティングにとっては致命的となる可能性もある。顧客がデジタルを活用して、品質に関する推薦やアドバイスを調べて入手することが可能ならば、彼らはオンラインでの広告やプロモーション(押し売りか否かにかかわらず)をどれほど受け入れるだろうか?

「もっといい広告とプロモーションが必要だ」というのは答えではない。「企業は広告とプロモーションよりも効果的な、別の何かが必要」なのである。

 カギとなるのは、付加価値を持つアデュケーションとアドバイスである。イケアは何十年間も、家具を組み立てる説明書の質が悪いことで批難されてきた。これを受け同社は、ユーチューブで組み立てを実演するチャンネルを開設し、最も複雑な家具でも簡単に組み立てられることを示すことにした。ここでのアドバイスとアデュケーションの効果は、シンプルでわかりやすい――家具の組み立てに関して顧客に安心と自信を与えれば、顧客はイケアの製品をより購入しやすくなる。マーケティングやブランディング、販売の観点からのみでイケアの将来を考えていては、顧客をトレーニングしたり教育したりするこのような取り組みが、顧客エンゲージメントにどれほどの効果を発揮するかがわからないだろう。

 ホームセンター大手のロウズの会員サイトMyLowe'sや、P&Gの〈パンパース〉 のサイトをちょっとのぞいてみてほしい。まだ初期段階にあるこれらの取り組みは、新たな方法で顧客エンゲージメントとロイヤルティを獲得し、「ロックイン」(顧客囲い込み)を行うだけでなく、顧客をより優れた方法で訓練し教育する方法を探るものでもある。ここでも、情報の提供は必要だが十分条件ではない。教科書そのもの――デジタルか否かを問わず――は、教育者ではないのだ。スターバックスやフォード、ハイアール、あるいはグラクソ・スミスクラインで、サルマン・カーンのような教育者は現れるだろうか(注:オンライン教育NPOカーンアカデミーを創設。TED講演の日本語字幕付き動画はこちら)。

 金融機関や医療機関、自動車メーカー、消費材メーカーはすでに、製品・サービスに新たな機能・性能を加えることよりも、顧客に試作品を提供しテストしてもらうほうがはるかに重要なブランディングの取り組みであることを理解している。あなたの企業では、優良顧客や見込み客の学習を促進するデジタルメディアをどう活用しているだろうか。どんな方法で、彼らの知識と能力を高めているだろうか。アマゾン、グーグル、アップル、イケア、IBMなどの企業はこの問いに対する答えを持っている。あなたはどうだろうか。

 ブランドの広告主が、広告に登場するしゃべるトカゲ運転するハムスターにどれほど愛情を注いでも、その見せかけの愛らしさや賢さは話題づくりのネタにすぎず、すぐに色あせる。それらは注目以上のものは引き付けない。デジタル化が進む未来で有効なのは、最も優れたアデュケーターでありアドバイザーだ――彼らはクライアントや顧客、見込み客の知識を適切に高め、間違いなく自信を与えることができる人々である。これこそ、広告界のパイオニアたち――デイビッド・オグルビー、ジェイ・シャイアット、ロッサー・リーブス――ならば歓迎したであろう挑戦だ。しかし私の予想では、彼らの後に続く現在の広告業界ではなく、そのクライアント企業のほうがうまく実現するだろう。


HBR.ORG原文:Invest in Your Customers More Than Your Brand February 25, 2013

マイケル・シュレーグ(Michael Schrage)
マサチューセッツ工科大学スローン・スクール・オブ・マネジメントのリサーチフェロー。著書にSerious Play: How the World's Best Companies Simulate to Innovate およびWho Do You Want Your Customers to Become?などがある。