興味深いのは、私がコーチングを担当したどのクライアントより、チャーリーに費やした時間が最も少なかったということです。一緒に過ごした時間が短かったにもかかわらず、チャーリーと従業員に顕著な成長が認められたことに、私は大いに自分のふがいなさを感じたのです。プロジェクトが終わったとき、私はチャーリーにこのことを伝えました。「私がいままでコーチングを担当してきたどのチームより、皆さんと一緒に過ごした時間は短かったのに、皆さんは非常に劇的で優れた成果を上げたと思います。私はこの経験から何を学ぶべきでしょうか」

 私の質問に思いをめぐらせたチャーリーは、こう答えました。「コーチとしてのあなたにわかってほしいのは、クライアントの成功は、すべてがあなたの功績ではないということです。最大の功労者は、あなたをパートナーに選んだ人たちなのです」。彼は含み笑いをしながら、さらにこう言いました。「ある意味、それは私も同じです。組織の成功は私の功績ではない。私と一緒に働いている立派な人たちのお陰だということです」

 実にすばらしい考え方だと思います。これはリーダーシップに関する一般通念とは違います。リーダーシップに関する文献の大半はリーダーの貢献を誇張し、美化さえしています。たとえば、すべてはリーダーから始まる、従業員の進歩はリーダーのおかげ、勝利に導くのはリーダーである、リーダーなくして進路は定まらない、というようなものの言い方です。

 これは間違っています。よく引き合いに出される言葉ですが、次の教訓を紹介しましょう。「最高のリーダーは、誰にも気づかれない。最高のリーダーが仕事をやり遂げたとき、人々は『自分たちでやり遂げた』と言う」

 チャーリーのような本当に優秀なリーダーは、コーチやリーダーが組織の成功のカギを握るという考え方が非常に浅はかであることを知っています。長期的な成果は、トップの地位を享受している1人の人間ではなく、仕事に携わるすべての人たちによってもたらされる――このことをきちんと理解しているのが、最高のリーダーなのです。


HBR.ORG原文:Leadership Isn't About You November 17, 2009

マーシャル・ゴールドスミス(Marshall Goldsmith)
エグゼクティブ・コーチングの世界的第一人者
ジャック・ウェルチを始め多くの名だたる経営者を指導してきた。代表作に『コーチングの神様が教える「できる人」の法則』(日本経済新聞出版社)などがある。