⑤他部門に対する非公式的な働きかけ

 第5の役割は、他部門に対する非公式的な働きかけです。複数部門にまたがる問題を改善するためには、場合によって、社内の非公式ネットワークを活用することが有効になりますが、ミドル・マネジャーは企業内のどの部門にどのような人材や技術・ノウハウが存在しているかを熟知しているケースが多く、これらの資源を活用するために、インフォーマルなネットワークを活用した他部門とのコミュニケーションを図ることができます。

 他部門に対する非公式的な働きかけという役割は、他職場に関する業務知識の習得、職務裁量権の拡大による自主性の発揮という2つのメリットの強化に結び付きます。ミドル・マネジャーが複数部門にまたがる改善を実現するために、社内の非公式ネットワークを活用して他部門に働きかけを行うことで、改善を担当する従業員が他職場に関する業務知識を習得しやすくなったり、他部門への働きかけを通じて職務裁量権が拡大し、自部門だけでは実現できない部門横断的な業務プロセスを改善することが可能になります。

⑥改善への抵抗を和らげるセラピスト

 第6の役割は、改善への抵抗を和らげるセラピストとしての役割です。職場での改善は、従業員の間に大きな不安感をかきたてる可能性があり、これを放置しておけば士気の低下・意気消沈・無気力へと陥いる可能性があります。ミドル・マネジャーは、このような社内の雰囲気や社員の感情的なニーズに対して、適切に対処する必要があります。

 改善への抵抗を和らげるセラピストとしての役割は、労働時間の延長、担当業務の労働密度強化、従業員間の対立強化、要員削減を通じて仲間の職場を奪う、作業上の安全・環境面での問題発生といった5つのデメリットすべての抑制に結び付きます。ミドル・マネジャーが社内の雰囲気や社員の感情的なニーズに対して敏感で、かつこのような状況に適切に対処することで、デメリットを完全になくすことは難しくても、各デメリットを軽減することが可能になります。

⑦改善結果の意味づけ・見せる化

 第7の役割は、改善結果の意味づけ・見せる化という役割です。ミドル・マネジャーは、改善活動に対する従業員のモチベーションを維持・向上させるために、個々の改善の結果を経営的視点から改めて意味づけ、できるだけ目に見える形で他部署の関係者や経営層に対して提示することで、従業員に対して活動の成果をフィードバックする必要があります。このフィードバックによって、改めて自らが行った改善は経営的にも有意義であったことを従業員自身が納得することができ、次なる活動のモチベーションに繋がるのです。

 改善結果の意味づけ・見せる化という役割は、知的欲求・達成感の充足というメリットの強化に結び付きます。ミドル・マネジャーが従業員に対して活動の成果を意味づけ、目で見える形でフィードバックすることで、従業員自身の知的欲求・達成感の充足に繋がります。

 以上、今回は、改善活動を推進する際のミドル・マネジャーの役割について考えました。最終回となる次回は、「改めて『ものづくり』を問う」と題して、海外工場において3Sを中心とした発見型改善を展開していく際のポイントについて議論したいと思います。