3. 消費者は「本物らしさ」を求めるようになる。

 未来のストーリーテリングでは、広告主に2つの相反するプレッシャーがのしかかる。1つ目に、発信側はいまよりもはるかに、フィクションの扱いに習熟しなければならない。ハリウッドの大作に肩を並べるほどの体験をもたらすには、魔法と象徴性、そしてドラマ性をふんだんに盛り込む必要がある。ますます飽きっぽくなっていく消費者を満足させるには、それ以外の道はない。カンザスからやってきたドロシーが見たオズの世界と同じような、彩りにあふれた世界を消費者に見せなくてはならない。ただし、インチキ手品師に支配されたオズの国で暮らしたがる者はいない。そこは魔法に満ちてはいても、欺瞞に基づいた世界なのだ。ドロシーは自分の物語の主人公となるために、この欺瞞をあばかなくてはならなかった。ここで、フィクションとは矛盾する2つ目のプレッシャーが生まれる――たとえ空想世界を創造するのであっても、本物らしさを重んじなくてはならないのだ。

 つまり、創造性や象徴性が重要視される一方で、消費者は現実と空想の境界線が曖昧にされることを許さない。たとえば自動車は、冒険や爽快感、ミステリーといった世界観と関連付けることで、興奮と情熱を演出できる。しかし、幸福をもたらすと約束しながら安全評価や環境性能が低ければ、消費者は競合他社の物語世界に流れてしまうだろう。ブランドが描く素晴らしい世界を体現し、消費者のより高い期待に沿うことは、営利目的から離れた社会的責任を果たすうえでも強みとなるだろう。

 このようなトレンドは、すぐそこまで来ている――と言うより、多くの点ですでに顕在化しているかもしれない。だが、このようなストーリー・プレイスメントの手法は、ブランドのストーリーをハリウッドの巨匠レベルにまで高めるものだろうか? 私は、5年以内にこの問いに「イエス」と答えられる、先駆的なブランドが現れると予言しよう。さて、その先駆けを果たすのはどのブランドだろうか。


HBR.ORG原文:The Decline and Fall of Product Placement February 22, 2013

ジョナー・サックス(Jonah Sachs)
フリー・レンジ・スタジオ共同創業者、CEO。