そして、このマルチスクリーンの世界が消費者にどれほどの勢いで定着しているかを示す、興味深いデータが現れ始めている。たとえば、従来型のテレビ広告の聖域であるスーパーボウルを見てみよう。これまでのスーパーボウルでのキャンペーンは、1つの高価な放映枠にブランドの総力を結集させるものだった。いまや、ハーフタイムに視聴者がリビングを離れて、キッチンにポテトチップスや炭酸飲料を取りに行ったとしても、彼らがその広告を目にしないということにはならない。スーパーボウルの広告主は、テレビ広告への投資を正当化し、付加価値を得るために、オンラインの視聴者にも対象を拡大することができる。今年、YouTubeに投稿されたスーパーボウル広告は、試合当日までに7600万回視聴され、スーパーボウルに関連した100本の動画広告やティーザーは、2億回も再生された。

 マルチスクリーンの世界でならばマーケティング担当者は、どのデバイスでも、各消費者の状況に適したメッセージを届けることが可能になる。ピザ専門店の場合を考えてみよう。昼どきにオフィス街で、スマートフォンを使ってピザを検索している人には、店舗検索とクリック・トゥ・コール(クリックひとつで通話できる電話番号のリンク)付きの広告を表示する。午後9時に自宅で、ノートPCやタブレットでピザを検索している人には、オンライン注文フォームやメニューへのリンクが付いた広告を表示すればよい。状況に配慮したこのような広告は、肯定的な反応を得られる可能性が高い。それは、人々が何かを素早く簡単に成し遂げ、生活を円滑に進める助けとなるからである。

 広告主は、より重視したいコンテクストに投資を集中すべきである。たとえば、先ほどのピザ専門店は客の入りが思わしくない日があり、昼どきの来店者を増やしたいとする。広告にはランチタイムのディスカウント、地図、そしてクリック・トゥ・コールを表示して、店舗の5マイル圏内で昼どきにピザを検索している人々に発信することができる。あるいは、あなたが経営する家庭用品店を営業時間中にモバイル機器で検索している人々がいれば、広告によって電話の問い合わせに誘導したり、店舗の地図を表示したりできる。一方、営業時間外の検索に対しては、店のウェブサイトに誘導して商品を調べたり購入したりできるようにすればいい。

 コンテクストを意識した広告は、つながりをつくり、楽しませ、インスピレーションや影響を与える。ユーザーの状況に合わせた好ましい体験を提供するので、邪魔に思われることもない。デバイスを中心に広告キャンペーンを考えるのではなく、今後は一段も二段も深く掘り下げて、コンテクストを吟味することをお勧めしたい。今日のマルチスクリーンの世界では、そこにチャンスが眠っている。

 

HBR.ORG原文:In the Multiscreen World, Context Is King March 8, 2013

ニケシュ・アローラ(Nikesh Arora)
グーグルの上級副社長兼CBO(最高事業責任者)。収益管理、顧客業務、マーケティングおよび提携を全面的に統括する。