本書で取り上げるのは、新しい市場空間を切り開き、需要を大きく押し上げた戦略的打ち手である。これらの戦略は利益増大をめぐるすばらしいストーリーを紡ぐ一方で、レッド・オーシャンを抜け出せずに事業機会をつかみ損ねた企業についての、教訓に満ちた逸話をももたらしている。筆者たちは、こうした戦略的打ち手を中心にすえて、ブルー・オーシャンが生み出され、好業績へとつながるプロセスを研究することにした。この研究では、30を超える業界で1880年から2000年までのあいだに見られた、150以上の戦略的打ち手を吟味して、それぞれの打ち手にかかわった企業や関係者についてもつぶさに調べた。業種はホテル、映画、小売、航空、エネルギー、コンピュータ、放送、建設、自動車、鉄鋼など多岐にわたっている。これらの業界の勝ち組企業だけでなく、その競合他社に関しても分析を加えた。

 筆者たちは、ブルー・オーシャンを創造した企業群、レッド・オーシャンから抜け出せずにいる企業群のそれぞれについて、戦略的打ち手がどのくらい似通っているかを探ってみた。また、これら二つのグループの違いについても調べた。その過程で、ブルー・オーシャンの創造につながる共通要因が何であるのか、ただ生き残るだけでなく大きな成功を手にする企業と、レッド・オーシャンを漂う敗者を分けるのは何か、を見出そうとしたのである。

 30を超える産業を対象とした分析からは、2つのグループの違いは産業の特徴によっても、組織の持ち味によっても説明できないことがわかった。業界、組織、戦略などを各方面から吟味したところ、ブルー・オーシャンを生み出した企業は規模もさまざまで、経営者の年齢にもばらつきが見られた。業界自体も、旨みのある業界もあれば、いわゆる衰退産業もあった。新規参入企業あり、老舗企業あり。ローテク業界あり、ハイテク業界あり。本拠とする国も多彩であった。

 筆者たちの分析からは、好業績を永続させてきた企業も産業も見つけ出せなかった。その一方で、サクセス・ストーリーは表面的にはどれも異なって見えるが、その陰には、ブルー・オーシャンを生み出して支配するための、共通した戦略があることもわかった。フォード・モーターによる1908年の〈T型フォード〉投入。ゼネラルモーターズ(GM)による1924年の、感性に訴えかける車種の発売。CNNによる1日24時間、週7日間のリアルタイム・ニュース放送開始(1980年)。コンパック、スターバックス、サウスウエスト航空、シルク・ドゥ・ソレイユ。いや、これらにとどまらず、筆者たちが研究対象としたブルー・オーシャンを生み出すための戦略はすべて、業界や時代を超えて不変なのである。研究ではさらに、公共セクターの立て直しに寄与した有名な戦略も扱ったが、そのいずれもが、驚くほど似通っていた。


【原注】
(13)Thomas J. Peters and Robert H. Waterman Jr.(1982)、Jim Collins and Jerry Porras(1994)。
(14)Richard T. Pascale(1990)。
(15)Richard Foster and Sarah Kaplan(2001)。


(c) Chan Kim & Renée Mauborgne
Excerpt from Blue Ocean Strategy by Chan Kim & Renée Mauborgne
Japanese translation rights arranged with Harvard Business Review Press
through Tuttle Mori Agency inc., Tokyo
無断転載・複製を禁ず

 

【書籍のご案内】

『ブルー・オーシャン戦略』
~競争のない世界を創造する

世界100カ国超の先進企業に採用された、不朽の名作。血みどろの戦いが繰り広げられる既存の市場「レッド・オーシャン」を抜け出し、競争自体を無意味なものにする未開拓の市場「ブルー・オーシャン」を生み出す戦略を提示。新市場を創造する方策を初めて体系化することに成功した本書は、戦略論のバイブルとしていまなお世界中で読み継がれている。

 

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