ブルー・オーシャンを開拓する必要性は高まっている

 いくつかの理由によって、ブルー・オーシャンを開拓する必要性は高まっている。技術進歩のスピードが速まり、生産性を目覚ましく向上させたため、企業はかつてないほど多彩な製品やサービスを生み出せるようになった。そしてその結果、需要を供給が上回る事態がさまざまな業界に広がっている(8)。グローバリゼーションの潮流もこれに拍車をかけている。国・地域間の貿易障壁が低くなり、製品や価格についての情報が世界のどこにいても瞬時に手に入るため、ニッチ市場も、天国のような独占市場も、消えつつある(9)。グローバル競争が厳しさを増すなか、供給は右肩上がりで伸びているが、需要のほうは世界規模でも増えているようには見えない。それどころか統計によれば、先進国市場の多くで人口は減少へと向かっている(10)。

 このようにして、製品やサービスのコモディティ化、価格戦争、利益率の縮小などが加速してきた。先ごろ各業種を対象に行われた、アメリカの主要ブランドに関する調査も、こうした流れを裏づけている(11)。調査からは、主だった製品・サービス分野では一般にブランドごとの違いが狭まり、その結果、人々は価格を重視して購入ブランドを決めている、という事実が浮き彫りになっている(12)。以前とは違って、「洗濯洗剤は〈タイド〉でなければ」などというこだわりは失われた。〈クレスト〉が安売りされていればクレストが、〈コルゲート〉が値引きになればコルゲートが買われるだろう。景気の良し悪しにかかわらず、多数の企業がひしめく業界ではブランドの個性を際立たせるのは難しくなっていく。

 以上から、20世紀の戦略論、マネジメント論の大多数が前提とした事業環境は、消えつつあるといえる。レッド・オーシャンが多くの血でさらに赤みを増すにつれて、経営者やマネジャーは、これまでよりもブルー・オーシャンへの関心を強めざるをえないだろう。


【原注】
(5)Standard Industrial Classification Manual(1987)とNorth American Industry Classification System(1998)を参照。
(6)同上。
(7)兵法の詳細と、それが限られた領土をめぐる競争に焦点を当てる様子を紹介した名著に、Carl von Clausewitz(1993)がある。
(8)この問題についてはRichard A. D’Aveni and Robert Gunther(1995)を参照。
(9)グローバリゼーションとそれが経済に及ぼす影響については、Kenichi Ohmae(1990, 1995a, 1995b)に詳しい。
(10)国連統計局(2002)。
(11)たとえば以下を参照されたい。Copernicus and Market Facts(2001)。
(12)同上。


(c) Chan Kim & Renée Mauborgne
Excerpt from Blue Ocean Strategy by Chan Kim & Renée Mauborgne
Japanese translation rights arranged with Harvard Business Review Press
through Tuttle Mori Agency inc., Tokyo
無断転載・複製を禁ず

 

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