4.民営化のデメリット

 民営化のデメリットとしては、事業の採算性・収益性が重視されるようになり、市営であれば維持・新設される路線が、今後はどうなるかわからないという不安が挙げられる。現在の収益性を路線別に見ると、御堂筋線、谷町線、四つ橋線、中央線、堺筋線の5つが営業収支ベースで黒字であり、千日前線、長堀鶴見緑地線、今里筋線、南港ポートタウン線(ニュートラム)は赤字である。また、支払利息を含めた経常収支ベースで見ると、御堂筋線、谷町線、中央線の3つだけが黒字である。

 しかし、地下鉄路線というのはネットワークを構成しているので、個々の路線の収益性を過剰に強調するのは適切ではない。赤字路線を利用する人が同時に黒字路線を利用するのも一般的なので、その赤字路線が追加されることによって、黒字路線の黒字がより一層大きくなっているのかもしれない。あるいは、ほかの赤字路線の赤字が小さくなっている可能性もある。ある路線を追加的に増やしたり減らしたりしたときに、ほかの路線の損益にどの程度の影響が出るのかについては、かなり緻密な予測が必要である。

 また、すでに建設してしまった地下鉄路線の場合、路線を廃止しても建設費用が回収できるわけではないので、オペレーションに直接かかるコスト以上に料金収入があれば、路線は維持されるはずである。現実問題として、既存路線が廃止されるのは、ほとんど利用者がいなくなるなど、かなり損益が悪化した場合に限られるだろう。このような分析は損益に直結するだけに、民営化されれば、市営時代よりも精緻な分析がされるはずである。

5.赤字が続く市営バスの扱い

 むしろ、路線廃止の可能性が危惧されるのは、赤字が続く大阪市営バス(自動車運送業事業会計)のほうである。大阪市交通局の下で、地下鉄事業といっしょに運営されるかぎりにおいて、バス事業の赤字が地下鉄の黒字で補填されるので、路線廃止になりにくいが、地下鉄が民営化されてしまうと、赤字の市営バスが維持されにくいのではないかと心配する向きもあるかもしれない。

 しかし、現在も市営地下鉄と市営バスの会計は分離されていて、市営地下鉄の黒字で市営バスの赤字が補填されているわけではない。バス事業も民営化の方針が示されているが、これは、地下鉄事業の民営化とは切り離して考えるべきである。パブリック・セクターにおいては、不採算事業を、黒字事業と一緒にすることで、事業を継続するということが行なわれがちであるが、これは実態を見えないようにしているにすぎない。黒字事業から赤字事業への実質的な内部補助金が出ているようなスキームは好ましくないだろう。