3. 創造的な雰囲気

 金融危機がもたらす厳しい環境のなか、昨今の組織の雰囲気は、創造性を育む土壌というよりも工場のアセンブリー・ラインのようである。多くの場合、同じことをより速く効率的に繰り返すことが求められる一方で、熟考、探求、緊密な連携などは、贅沢で不要なことと考えられている。PARCの文化は、これとは似ても似つかないものだった。あらゆる優れた企業文化と同じく、PARCの文化も壮大なビジョンから生まれた。創設者ジョージ・ペイクは、「未来のオフィス」をつくることを目指したのだ。同社のコンピュータ・サイエンス研究所の責任者ボブ・テイラーとペイクは、創造性を促進するためのほぼ完璧な職場環境を構築した。情熱を追求する自由、挑戦しがいのある目標、協働を促進する環境、熟考を重ねるための十分な時間、そして夢の実現のために必要十分な資源、などがある環境だ。どんなに頭が良くて情熱的な人であっても、息苦しい環境では活躍できず、やがて会社を去るだろう。PARCで働き始めた人々のほとんどは、決して離れたいとは思わなかった。

 PARKは時代の先を行っていたが、決して例外的な存在ではなかった。今日でも、創造性の土壌となっている組織は世界中に存在する。新しいベンチャー企業だけでなく、MITのメディアラボ、ソニー、デザイン会社IDEO、ディズニー傘下のピクサーといった名門組織もある。しかし上記に挙げた、事業における創造性の3つの要素がこのまま減少していけば、未来のPARCとなりうる組織はまもなく絶滅の危機に瀕するだろう。

 PARC設立から40年経った今、世の職場環境は、創造性を育むことにおいてどれほど向上しているのだろうか。創造性に溢れている環境はベンチャー企業にしかないのだろうか。読者の皆さんが所属する組織は、どちらだろう――創造性が危機に瀕しているのか、あるいは何らかの方法で守られているだろうか。


HBR.ORG原文:The Three Threats to Creativity November 15, 2010