4. 思考の多様性に乏しく、顧客体験からかけ離れている

 次のような例にはいつも驚かされる。顧客のほとんどが女性なのに、イノベーションに関する意思決定を男性に委ねている企業。大学生をターゲットにしているのに、従業員の平均年齢が48歳の企業。携帯電話の通話が途切れたり、受信状態が悪かったりして顧客を不快にさせているのに、幹部が何も関知していない携帯電話会社。以上の例は、幹部が実際の顧客体験に関わる問題にほとんど対処していないことを示している。さらに突き詰めれば、多様性が危険なまでに欠如していることを反映するものだ。

 ここで言う多様性とは、人種や宗教のことではない。肝心なのは、新しい取り組みの重要性を認識し、新しい顧客層を引き付けるアイデアを支援する十分な余地が、意思決定層にあるかどうかだ。これは想像以上に難しい。なぜなら、人は同類といれば安心するという傾向があり、従来の常識に異を唱えれば、チームの結束を乱す者という烙印を押されるからだ。

 あなたの組織に、多様な考え方や意見を受け入れる仕組みがあるかどうか、確かめてみるとよい。たとえば、女性役員の比率が平均を上回る企業は業績も高い、ということを裏付ける確かな証拠がある。それらの企業は新しい考えに対してオープンであるということなのか、あるいは多様性が良い業績をもたらしているのか、定かではない。しかし、複雑な組織やシステムに対応する場合、経験の幅が広いチームほど、良い成果を生み出す傾向があるのは明白だ。

5. 前提や仮定を知識として扱う

 私がイノベーションに関する研究に従事して以来、計画通りに遂行されたプロジェクトやイニシアチブ、アイデアを目にしたことはただの一度もない。偉大なアイデアが実際に成功をもたらした場合でも、最初はまったく違う前提から始まったものであることも少なくない。しかし企業は往々にして、何か新しいことに挑戦しようとする時、コア事業におけるわずかな改善で得られるような、確実かつ予測可能な成果を期待する。その結果、多くのイノベーション担当リーダーは、過去に設定した前提が今後は有効ではないとしても、その前提に縛られてしまう。なお悪いことに、予算編成と計画立案のプロセスは「正しい」ということを特に重視するため、イノベーションチームには誤った前提を設定したことを認めるインセンティブがない――少なくとも、かなりの費用が発生しない限りは。

 ここでの懸念は、「正しい」ことを実行する最も簡単な方法が、リスクを避けることであるということだ。そしてイノベーションを率いるマネジャーは、「正しい」成果に対して報酬を得る。企業が膨大な費用を費やしながら失敗に終わった事例をまとめた私のファイルを見れば、そこには共通点がある。前提や仮定を事実として扱い、多くの費用を投じる前に十分な検証を行っていなかったということだ。それよりも、ベンチャーの初期段階ではほとんどの物事が推測の域を出ない(確実に正しい事実などない)、ということを認識しておくほうがよい。それらの推測は正解となるものもあれば、間違いでも有益な知識をもたらしてくれるものもある。どちらでもかまわないのだ。

 以上が、イノベーションに真剣に取り組む経営幹部が気づくべき5つの早期警報と、それを回避するアドバイスである。イノベーションの取り組みの障害を軽減し、信頼性を高め、楽しいものにするための知識がますます蓄積されていることは明るいニュースといえるだろう。


HBR.ORG原文:Five Ways to Ruin Your Innovation Process June 5, 2012