2. 経営資源が既存事業の担保に取られている

 大規模で複雑な組織を変革する最も有効な手段を知りたければ、リソースの配分プロセスを理解する必要がある。リソースは力のあるところに流れる。リソースの行く先を見れば、組織が何を重要視しているかがわかる。残念ながら、複雑な組織におけるリソース配分は通常、イノベーションと相性が良くない。事業の重要性が、(将来性ではなく)その管理下にある人材・資産と直結していた時代の仕組みだからだ。 安定した環境下での生産が可能であった時代は、それが完全に理に適っていた。しかしイノベーションを求める企業にとっては命取りである。

 勢いのある事業を運営するマネジャーのほとんどは、その事業を縮小したり、資産や機能を移転したりすることに関心を持たない。彼らにとってリソースは、衰退し始めた事業と自分の地位を延命させる手段となる。ここで2つの問題が生じる。ひとつは、貴重な資産が将来につながらない事業に費やされてしまうこと。もうひとつは、企業の成長に投資すべき資金がその事業の担保に取られてしまうことだ。

 企業がこの問題を回避する方法は、私が知る限り1つしかない。上級幹部に、既存事業からリソースを引き出して新規事業に再配分する任務を与えることである。これは容易にできることではない。IBMはイノベーションのプロセスを根本から改革する必要に迫られ、「エマージング・ビジネス・オポチュニティ」(新規事業のチャンスを開拓する)というモデルを導入した。この取り組みでは、イノベーションに割り当てられた人材と資産が既存事業に流用されることがないよう、上級幹部が厳重に監視する。ベライゾンの元CEOアイバン・サイデンバーグは、固定電話と電話帳から上がる収益をワイヤレス部門とエンターテイメント事業に再配分した際に、社内外から多くの批判を浴びた。ここでの重要な教訓は、既存事業が人材と資金の配分先を決定できるのであれば、イノベーションは実現しないということだ。

3. 既存の組織構造の枠の中で、イノベーションを行おうとしている

 ベスト・バイの賢明なる元CEOブラッド・アンダーソンは、こんな印象深い言葉を述べている。「組織には習慣があります。自社が存続の危機にあっても、組織はその習慣に固執するものです」。これはイノベーションにおいて最も顕著であろう。すなわち、企業がイノベーションに適した組織をつくるのではなく、既存の組織の枠組みの中でイノベーションを行おうとする場合である。

 今日の組織構造は、過去に生じた問題を解決すべく生み出された結果だ。かつて多くの組織は、各職能の効率を最大化すべく構成されていた。やがて外部に目を向けるようになると、戦略に基づく事業別部門へと再編されていった。そしてコア・コンピタンスを獲得するために再編され、そのままでは破壊的イノベーションに対して無防備であるとわかると、さらに再編され・・・・・・といった具合だ。つまり、既存事業を支えるための現在の組織構造は、イノベーションには適していないといえる。

 情報サービス企業ウォルターズ・クルワーのCEO、ナンシー・マッキンストリーはこう述べている。「組織の構造とは短期的なものです。組織の再編を好む人など誰もいません。従業員の気をそらし、顧客に対する集中力を低下させるリスクが付きまとうでしょう。しかし、それを実行しなければ、競争力を失うことになるのです」