バリューチェーンという概念は、製造の各段階で価値がどう付加されていくかを測定するものであるといえる。しかし価値というものを、サステナビリティ・インデックスに基づいて別の角度から見ることもできる。すると、製品がそのライフサイクルを通して環境、健康、社会に与えるすべてのインパクトが価値基準となる。ウォルマートは評価指標を一元化することで、製品のあらゆる負の要素――いわば「負の価値の連鎖」(devalue chain)――を明らかにするきっかけをつくり、競争要因としたのである。

 これらの指標の戦略的意義は、すべての負の価値が改善の余地を意味し、改善するたびに製品全体の評価が向上するというところにある。製品のライフサイクルを通じて生態系にプラスとなる要素とマイナス要素を分析することで、プラスを促進してマイナスを低減するような意思決定の基準が明らかになる。

 ウォルマートの確立したインデックスは、サプライチェーン全体における、そして製品ライフサイクル全体についての、環境負荷への取り組み方を示唆するものだ。インデックス向上のために、「グリーン」という言葉は一定の状態ではなくプロセスとなり、形容詞ではなく動詞となる。この分野で競争力を維持するには、企業はグリーン化を継続的に行い、エコロジカル・フットプリントを改善する方法を模索し続ける必要がある。

 ウォルマートCEOのリー・スコット(2009年当時)は、アンディー・ルーベンを同社初のサステナビリティ担当副社長に任命した。私は『エコを選ぶ力―賢い消費者と透明な社会』(邦訳2009年、早川書房)を執筆中に、PB品調達戦略を率いる彼と話をすることができた。

「私にとって、製品のあらゆる負のインパクトは、予想外の結果に関する発見なのです。1つの意思決定が数千もの予想外の結果をもたらすとすれば、私たちはそのうち10くらいしか見えていないのかもしれません。優れた競争力を持つ企業なら、こうした未知のインパクトを明らかにし、より的確な判断を下そうとするでしょう。つまり、より幅広い観点でビジネスを捉えることで競争力を高めるのです」

 このように、イノベーションを促進するうえで、負の結果に焦点を当てることの利点は計り知れない。ルーベンはまた、次のように述べている。「これは企業が今後50年間で見出す戦略的な機会として、最大のものかもしれません。今こそ、ビジネスを通してかつてないほど世界に変化をもたらす最大の好機なのです」


HBR.ORG原文:Wal-Mart Exposes the De-Value Chain July 17, 2009