なぜ3S活動の継続が
文化の創造に結び付くのか

①整理の意味

 それでは、なぜ3S活動の継続が文化の創造に結び付くのでしょうか。まず、3S活動の第1段階である「整理」から見ていくことにしましょう。「整理」とは、「要るものと要らないものを分けて、要らないものを捨てる」という行為でした。その際、要らないものを識別する手段として、赤札作戦という方法がよく用いられます。

 製造現場に置いてあるもので、要らないと思われる物に赤札をぺたぺたと貼っていき、一ヵ所にまとめておいて後で一気に捨てるという単純な方法です。この赤札作戦は、方法としては単純なものなのですが、実際に赤札を貼って捨てるまでには、組織としての的確な判断と決断が必要になります。

 例えば、立場や役割が変わると、人によって不要だと思われていた物でも、別な人にとっては必要な物も出てきます。また、同じ人でも、1週間前は不要だと思って赤札を貼ったが、よくよく考え直してみると、やはり必要だと思い直したということもあります。このようなケースがあるため、実際に赤札を貼って、組織としてこの物は不要だと断定するためには、赤札を貼った本人がなぜこの物は不要かを他のメンバーに説明した上で、他のメンバーもその理由について、納得するプロセスが必要になります。実はこのプロセスこそ、工場における文化を創造する第一歩なのです。

 つまり、ある物が不要か否かを判断する過程で、必ずこの職場や仕事の目的について考察せざるを得なくなります。この職場の仕事に直接関係ない、付加価値を生まない物であると明確に判断するためには、翻ってこの職場の仕事の目的が明確になっていなければならないのです。特に、不要か否かを判断する際に、異なった見解が生まれやすいグレーゾーンの物であればあるほど、この職場の仕事の目的が明確になるきっかけになります。

 少々大げさに言えば、組織として赤札を貼るという行為は、これまで漠然と存在していた職場のすべての物に対して、特定の物が不要であるという「しるし」をつけて排除することで、この職場とそれ以外の外部・異物との境界を明示する行為です。そして、このような行為を通じて、職場の仕事が何かといった仕事の目的・意味が組織として生成され、職場の新しい秩序が生まれるきっかけになるのです。このように、「整理」という活動は、特定の職場に対する外部・異物を識別して境界を明示し排除することを通じて、それまで漠然と存在していた混沌とした職場に対して、秩序を形成する行為の第一歩に他なりません。

②清掃の意味

 このように、「整理」という活動の意味を解釈すると、「清掃」も次のように解釈することができます。つまり、「清掃」とは、「整理」活動を通じて一旦形成された内と外を区別する境界を、維持・確認する習慣的な行為を通じて、内なる秩序を維持していく行為です。不要な物に赤札を貼って捨てるという「整理」活動は、毎日行われるものではありません。頻繁に行われるケースでも、毎月とか3ヵ月に1回で、職場の一斉棚卸しに合わせて期単位で行われるケースが一般的かもしれません。

 それに対して、「清掃」は、毎日あるいは勤務シフト単位で1日に数回行う習慣的行為です。したがって、「清掃」は、「整理」を通じて形成された内と外を区別する境界に対して、内なる職場に外部・異物がないか毎日点検する行為を通じて、境界を維持・確認する習慣的な行為であって、新たな秩序の形成というよりも、「整理」を通じて形成された秩序を維持する行為なのです。

③整頓の意味

 一方、「整頓」はどのように解釈することができるでしょうか。一言で要約すれば、「整理」「清掃」活動が内と外を隔てる境界を設定・維持することで、内なる秩序を形成・維持する行為であったのに対して、「整頓」は職場内に存在する様々な物を役割や頻度に応じて階層化して再配置することで、内なる秩序をさらに徹底していく行為です。

 決められた物を決められた場所に決められた量だけ置くという3定は、職場のルール・秩序を空間内に埋め込み、他人からも「見える化」することで監視の目にさらし、内部のルール・秩序をさらに徹底していく行為です。また、使用頻度に応じて必要な部品・治工具・金型などを作業者の近くに配置する手元化は、職場内にある様々な物を役割や使用頻度に応じて、まさに階層化して再配置することで、内部のルール・秩序をさらに徹底していく行為です。

 このように見てくると、3Sの徹底は、まず「整理」を通じて、職場の内と外を隔てる境界を設定し、内なる秩序を形成する一方で、「清掃」を通じて、内と外を隔てる境界を毎日点検し、習慣として内なる秩序を維持・確認し、最後に「整頓」を通じて、職場をさらに階層化して再配置していくことで、内なる秩序を徹底していくという意味で、工場文化の創造に結び付く行為であると考えることができます。