競争優位を生み出す環境問題の特定

 NGOとの対話によって企業は自社が大きく改善できる環境問題を事業、地域、製品といった様々な角度から複数発見する。重要なことは、その中から持続的な競争優位の構築に繋がるインパクトが大きな環境問題を的確に選択することだ。選択に当たっては、 “規制作りの進展度”と“解決に必要なマネジメント力”から環境問題を4つに分類し、それぞれの位置づけを明らかにすることが有効だ(図1参照)。

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図1:競争優位を生む環境問題を見極める視点

 解決に必要なマネジメント力とは、環境問題を解決するために説得が必要なサプライヤーの数の多さ、必要な投資額の大きさ、解決技術の見通しの不透明性など、実行に必要な困難の大きさを意味する。“道徳者”と“遵守者”はいずれも解決力が低く、それゆえに競合も対応ができてしまう領域だ。これに対し、“ルール形成関与者”と“ルール創造者”は解決力が高いために実行に踏み込める企業が限られる。ゆえに、この2つの領域が持続的な競争優位を生み出す環境問題になる。

 “ルール形成関与者”の領域にはこの問題に関係する多くの企業がすでに規制の素案作りに動き出しており、近い将来規制が登場する可能性が極めて高い状態である。しかし、現時点ではまだ規制の中身と施行時期は不透明なままだ。ここでは作られる規制に翻弄されるのを座して待つのではなく、協議に加わって自社が解決に大きな力を行使できるテーマを織り込ませ、より良い規制のあり方に向けて発展的な影響力を発揮していくことが有効だ。これに対し右下の“ルール創造者”はまだ一部の個人や団体しか規制の必要性を訴え始めていない状況にある。重要な点はこの領域に該当する環境問題に対しては、自社以外に大きな影響力を持てる企業が存在しない可能性が高いことだ。その場合、自社が考える社会像を顧客に対して最も直接的に伝えることができ、独占的に関心を惹きつけることが可能となる。まさに独自のポジショニングだ。ここで環境問題の解決機能を事業に埋め込み、自社の成長と連動して環境問題を改善させるビジネスモデルとバリューチェーンを作り上げれば、持続的な競争優位が築けるのだ。そして、多くの企業をこの取り組みに巻き込んでいく先進的な環境規制をデザインすることが、効果的なルール形成戦略の実行となる。

成否を決める経営陣のイノベーション志向

 しかし、日本企業はルール創造者になることに及び腰だ。解決が難しいテーマであるうえに、まだ本当に規制を求める声が増えるかどうかも分からない段階で、敢えて自らを苦境に追い込む規制作りに取り組む必要などないという議論に陥る。しかし、サステナビリティ戦略はまさに経営陣が自社の責任範囲を捉え直し、不可能と思える課題に全社をチャレンジさせるべく、退路を絶って企業変革を行う意思決定そのものだ。経営陣のイノベーション志向の強さが取り組みの可否を決定する。新興国市場での勝敗も、欧米の先進企業に対して経営陣同士のイノベーション志向を競い合うサステナビリティ戦略を制することが生命線となる。真の環境先進企業として新興国市場に君臨するために、日本企業の経営陣は自身のイノベーション志向を圧倒的な次元に高め続け、組織学習を加速させていくことが必要だ。