●プロモーション以上の価値を、顧客から引き出す

 企業に新規取引先を紹介してくれる忠実な顧客は、おそらくその企業がとても好きなのだろう。したがって、事業の成長に貢献してもらう方法を、紹介だけにとどめる必要はないのだ。

 彼らは推奨や高評価によって、販売やマーケティングの活動に喜んで力を貸してくれるかもしれない。あるいは業界のイベントで、企業のために話をしてくれるかもしれない。ユーザーのグループや顧客コミュニティにも参加してくれるかもしれない。ほかにも、いろいろ考えられるはずだ。

 注目すべきなのは、一流企業でもこうした機会を逃すということだ。

 コリーン・カイザーはSAPの顧客紹介プログラム(既存顧客から知人に製品・サービスを紹介してもらうマーケティング活動) を引き継いだとき、プロモーター顧客に「紹介」してもらうだけでなく、「推奨」してもらうべきだと考えた(ここでいう「紹介」とは、顧客が友人や同僚にその製品を提案することを指す。「推奨」とは顧客が見込み客にその製品の価値を保証することを指す)。調べてみると、プロモーターのうち20%しか顧客紹介プログラムに参加していないことがわかった。実際、紹介者のなかで、NPSのアンケートでみずからをプロモーターだとしていた人は非常に少なかった。

 カイザーはこうした偏りを是正するために、明確な手段を講じた。プログラムにプロモーターを参加させるよう万全を期し、その参加率を3倍以上の70%に上げたのだ。これは難しいことではなかった。結局のところ、彼らは「SAPを推薦する可能性が非常に高い」と答えた顧客だったのだから。その結果、販売後の調査では営業担当者の認識に変化が生じていた。顧客からの紹介はこれまで「中程度の効果」とされていたのが、是正後は最も有益な競争優位のひとつと見なされるようになったのだ。

 ●プロモーターを超えた「擁護者」を育てる

 ソーシャルメディアが台頭し、買い手は製品や事業について営業担当者やマーケティング情報に接するよりずっと前に自分で調べられるようになった。これにより、「プロモーター」という概念そのものが時代遅れになりつつある。消極的すぎるのだ。

 2012年の顧客エンゲージメント・サミットで提唱された概念は「擁護者」(ディフェンダー)というものである。彼らは企業に「宣伝して欲しい」と頼まれるまで待っているような受け身な顧客ではなく、その企業について語り合うソーシャルメディアのサイトで積極的に発言し、否定的なコメントを訂正し、肯定的なコメントを拡散するような顧客だ。

 セールスフォース・ドットコム(SFDC)をはじめ、こうした顧客を開拓しようとする企業が増えている。

 このような顧客は通常「MVP」(最も価値のある専門家)と呼ばれる。2012年のサミットでは3人のMVPが登壇し、SFDCのブランド強化に貢献した活動を語ってマーケティングのプロたちをうならせた。MVPはブログに書きこみ、ライブイベントに参加し、識者の集いにも出席する。その見返りとして、SDFCのイベントでは最前列の席、登壇の機会、そして他にもさまざまな恩恵を受ける。だが、彼らはこうした活動を無償で行っている。それ以上の取り決めをしたら、客観性についての得がたい評判が汚されてしまうだろう。

 擁護者は、単に忠実な顧客であるという次元をはるかに超えている。彼らは自身の成功をSDFCの成功と重ね合わせ、積極的にSFDCを推奨し擁護する。今日の世界では、こうした第三者的立場の情熱的な擁護者が、企業にとって最も強力な財産となり成長維持の源泉となるのである。


HBR.org原文:The Hidden Wealth Beyond Net Promoter May 10, 2012.