4.顧客がつくった「アプリ」に注目する

 ここで言う「アプリ」とはソフトウエアに限らず、製品やサービスに対し、顧客を含む外部者が施した「改良」のすべてを指す。たとえば、フォードがピックアップ・トラックを開発したのは、農民たちが〈モデルT〉(T型フォード)の後部のパーツを取り外し、木製の平らな台車を取り付けて農業用の機器などを運べるようにしたのがきっかけだった。フォードはまず農民向けに、モデルTの車体を1トンの荷重に耐えられるよう改良したものを発売し、売上げが伸びると、荷台が付いた〈モデルTランナバウト〉を1925年に発売した。ヘンリー・フォードは顧客に何が欲しいかは尋ねず、従業員からの改善提案をはねつけることで悪名高かったかもしれない。だが、顧客や市場の判断は進んで受け入れたのである。

 セールスフォース・ドットコム(SFDC)は、外部のディベロッパーおよび顧客にアプリを開発させるというコンセプトを徹底的に追求した。つまり「サービスとしてのソフトウェア」(SaaS)の提供から、「サービスとしてのプラットフォーム」(PaaS)の提供へと変更した。これは、社内の開発者は多様な顧客のニーズにとても応えきれないが、顧客や社外のディベロッパーがそれを行うならば支援することはできる、という同社の認識から生じたものだ。この仕組みはSFDCに大きな見返りをもたらしている。プラットフォームには既存顧客をつなぎ止める機能があり、さらに同社のプラットフォーム「アップエクスチェンジ」で提供されるアプリについてはロイヤリティを徴収しないことで、新規顧客の獲得にもつながっている。

 顧客が開発するアプリ(顧客ではないディベロッパーが開発するアプリと対比した意味で)には、巨大なビジネスの可能性がある。クローズド・イノベーションの文化をもつアップルは、当初はアプリのディペロッパーに対してプラットフォームを公開したがらなかった。しかしそうした可能性に気づいたいまでは、エンジニアを積極的に大学のキャンパスに派遣してアプリ開発の方法を教えている。豊富な知識を持ち情熱的で洗練された顧客のなかから強力なイノベーションが生まれる可能性を、アップルは明確に意識し始めたのだ。


原文:Turn Your Company into a Customer Platform May 2, 2012