7.企業価値評価は市場テストがベスト

 以上の試算は、インターネットで手に入る資料に基づいて、大雑把な近似計算をしたものにすぎない。また、筆者が見落としている重要なファクタがどこかにあるのかもしれない。

 しかし、本格的な企業価値評価を専門家に依頼する場合であっても、評価額はいろいろな仮定に依存するので、2割や3割は簡単にブレる。買い手は安く評価して欲しいし、売り手は高く評価して欲しいから、買い手の評価と売り手の評価は、場合によっては倍以上乖離することもある。

 このような企業価値評価によって、東京都民と(東京都民以外の)日本国民とのあいだで、数千億円の富の移転が起こる可能性があるとすれば、仮定に基づいた企業価値評価によって、株式売却価格を決めるのが適切かどうか議論の余地がある。

 実現可能性を度外視して、ベストの方法を考えるなら、東京メトロも都営地下鉄も、上場基準ギリギリの3割程度の株式を上場し、市場が評価した株価に基づいて、経営統合比率を決定するのがいいだろう。この場合、経営統合の効果によって企業価値が高まる部分も東京都と日本国に適切に割り当てられることになる。また、市場テストによって決まった比率であれば、東京都民にも東京都民以外の日本国民にも納得が得られやすい。そして、都営地下鉄の有利子負債をどの程度東京都が肩代わりすれば、都営地下鉄の上場が可能になるかについて、仮定に基づく計算ではなく、実際の市場の評価をもって確認することが可能になるはずである。