4.東京メトロの圧縮記帳

 ここで、どういう会社とどういう公営企業を統合しようとしているのか、基本的な数字を確認しておこう。まず、東京メトロの連結財務諸表である。図1を見てほしい。

        (図1)東京メトロの比例縮尺連結財務諸表

 
 この図には、インフラ系企業の特徴が強く出ている。大きなB/S(貸借対照表)に小さなP/L(損益計算書)、そして、資産のかなりの割合は有形固定資産が占めている。この有形固定資産の多くは、地下鉄の路線そのものなので、かなり長期に渡って使うことになる。できれば、返済期限のない株主資本でファイナンスしたいところだが、資金調達コストが安いので、社債や借入金を借り換えてファイナンスしているのだろう。倒産する確率が低いインフラ系の場合、合理的な財務戦略である。

 また、B/S上の有形固定資産の金額はかなり小さめに出ていることに注意が必要である。国庫補助金、地方公共団体からの工事負担金など、国や東京都が援助した金額分だけ固定資産の金額を減額しているからである。これを「圧縮記帳」という。圧縮記帳は、固定資産投資の補助として提供された補助金等がすぐに課税対象となるのを防ぎ、固定資産が減価償却されるにつれて、補助金等が少しずつ課税されるようにする仕組みである。

 連結貸借対照表に対する注記によると、圧縮記帳の金額は、3646億円にのぼる。これがすべて有形固定資産を対象としているのかどうかはよくわからないが、概ね有形固定資産を対象としていると考えていいだろう。

 有形固定資産の減価償却累計額は1兆5221億円なので、取得原価は、1兆624億円+1兆5221億円=2兆5845億円となる。この取得原価は、圧縮記帳によって3646億円減額されており、本来の取得原価は2兆9491億円程度と見積もれる。正確な見積もりをするためには、もっと詳しく検討しないといけないが、大雑把にいえば減価償却費が、3646億円÷2兆9491億円=12.4%程度低めに出ていると考えてよい。あるいは、本来の減価償却費は、3646億円÷2兆5845億円=14.1%程度多いといってもいいだろう。2012年3月期の減価償却費は766億円なので、766億円×14.1%=108億円程度、営業利益が増額されていると概算できる。

 もっとも、工事負担金は私鉄にもある。東京メトロの利益だけが増額されているわけではないことに注意しておこう。