クリエイティブなものを生み出す作業には時間がかかり、1度に完成することはない。創意は徐々に立ち現われてくるものだ。私の場合は日に2~3時間も集中すると、その後は生産性がひどく落ちてしまった。

 それでは、2週間ものあいだ私は何をしていたのか。すべての時間を練習にあてるなど、できるはずもなかった。多くは、スピーチに対してストレスを溜めている時間だったのだ。

 なぜスピーチ以外の重要なことに時間を使わなかったのか。まったく合理的ではないのだが、スピーチの準備という名のもとに自らの行動を正当化していたのだ。結局、貴重な作業時間を使って長く休憩を取ったり、インターネットをしたり、食べたりして気晴らしをしてしまった。信じがたいが、これが経緯である。

 まわりの人たちは私に、「心配しないように」と勇気づけてくれた。「あなたは元々スピーチに向いているし、頻繁にスピーチをしているのだから、いつものようにやればいい。ありのままの自分でいればいい」のだと言ってくれた。しかしそうした言葉は、私のスピーチが並外れて素晴らしいものになることへの期待を感じさせた。プレッシャーはよけいに高まるばかり。

 では、大きな挑戦をする場合、プレッシャーにどう立ち向かえばいいのだろうか。私の場合、以下の2つが役に立った。

1.時間がなくなったこと

 はじめに2週間を確保した。1週間過ぎて、残り3日となった。ここで私の生産性が跳ね上がった。こんな言葉もある――何かを成し遂げたいのなら、忙しい人にやらせろ。ほかの言い方をすると、もし何かを達成したいのなら、あなたが忙しい人になれ。スケジュールを空にしないで、一杯にするのだ。忙しければ忙しいほど、怠惰に過ごす時間は減る。私は1日2~3時間だけをスピーチに集中して、ほかの時間を重要な仕事で埋めるべきだったのだ。

2.期待値を変えたこと

 スピーチを数日後にひかえたある朝のこと。私のコンピュータに妻エリナーのメモが貼ってあり、こう書いてあった。「スピーチはそれほど成功しないかもしれないわ。でも大局的には、それはどっちでもいいことじゃない? たぶんうまくいくとは思うけど、大成功じゃなかったとしても、ほどほどにはできるでしょう。つまり、結局は大丈夫ってこと」。メモを読んだあと、私の気持ちは切り変わった。このスピーチに必死になるのをやめたのだ。面白く、スマートで、独創的なスピーチにしようとするのもやめた。「3つの大切なこと」について話すのもやめた。今までで最高のスピーチにしようとするのもやめた。

 その代わりに、自分が必ず達成できると知っている目標を据えた。何か1つのことを話そう――それは重要なことでなくても構わない。自分にとって意味のある何かであれば――それをシンプルに、情熱を込めて語るのだ。

 人生は一連のプロセスである。ひとときの成功や失敗は変化を生むかもしれないが、長い年月の中でまっとうな一瞬一瞬を着実に積み重ねていくことのほうが、よほど大きな違いをもたらすだろう。


原文:The Big Test: How to Handle Performance Pressure October 27, 2010